TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(火曜午後10時)がいよいよ残り2話となった。塾講師の春見(深田恭子)に、教え子の由利君(横浜流星)、東大卒のいとこ、雅志(永山絢斗)、元同級生の山下(中村倫也)のイケメン3人がアプローチする少女マンガの世界観だが、独創的なせりふの数々はアンダーラインを引きたくなるものばかり。男子3人のパワーワードぶりは前回の当欄で紹介したので、今回はヒロイン春見先生編をメモしてみた。

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TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS
TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS

◆「キツい時はキツいってはっきり言わないとね、大人になってからパンクの仕方すら分からない人間になっちゃうんだから」「私みたいなつまらない大人になっちゃ絶対にダメ!」(1話)

※父親への反抗心を押し殺している由利君に。言うべき時はバシッと言う、32歳ヒロインのかっこよさが覚醒した瞬間。自分の失敗を踏まえた迫力に人ひとりの人生を変えるだけの説得力があった。

◆「親のこととかはどうでもよくてさ。勉強して覚えた知識は君のもんだから」(1話)

※「教えてくれ」と本気で来た由利君に夜の境内で即席の授業をして。何げなく言ったひと言にこれ以上ない真理があって、不思議と泣けた。こういうせりふに毎週出会えるなら最後まで見ようと決めたせりふ。

◆「死ぬ気でやります」(1話)

※山王ゼミナールから契約解除を打診されて。こういう体育会系なひと言に、サバサバしたキャラクターが垣間見えるのもクスッとくるところ。ほかに、不良集団との関係を聞かれて「しみったれた人生の先輩です」、由利君との関係を邪推されて「17だよ?捕まるわ」など。

◆「そんなもん責任なんて自分でとるんですよ、自分の結果なんだから。受験会場でペンを持つのは本人です」(2話)

※文科省局長の息子である由利君が不合格になった時の責任問題について語る講師陣に。

TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS
TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS

◆「君らに大事な人ができた時、その人を守ることができないのは、自分を守れないよりきっと悲しいよ。家のローンを組むにしたって、あの細かい契約書を理解できる程度に勉強しないと損するし、ヘタしたらだまされる」「将来、子どもの夢を手助けしたい時、そのための知識や、知恵や、力が足りなかったら。想像してみて。どんな自分になりたいか。そのためにはどんな勉強が必要か」(2話)

※由利君の通うヤンキー高校で出張講義をし、生徒から「勉強が何の役に立つのか」と聞かれて。「大切な人を守る」という方向から勉強を語ったせりふに、なるほど感がずっしり。

◆「顔を上げてしっかり見なさい。このゴミを」(3話)

※現実逃避で悪い大人についていった教え子の女子高生を現場で保護して。自分もゴミになりかけていたことを自覚させる、直球のひと言。「裏切られたなんて言葉、簡単に使うのやめなさい。された、された、じゃない。好きになった自分にもっと責任を持ちなさい」というせりふも良かった。

◆「どっちも偉いよ。違う場所で、違う苦労をして頑張ってきたの」(4話)

※一念発起した不良の方が、幼稚園から頑張ってきた自分より偉いのかと塾生に反発されて。こういう視野の広い見解をさらっと言える大人はすてき。続けて「いろんな子が平等に試験を受けて、その日の学力で合否が決まるのが受験なの。一切の言い訳もない」。受験敗者のヒロインの潔さが痛切で、自分の結果を人や世の中のせいにしない人は信頼できる。

◆「現代文の答えに解答者の主観は要らない。文章を書いた作者の意図をそのまま答えればいい」「個人の感想に正しいも間違ってるもないでしょう。みんな正解だもん。だから、たったひとつしかない作者の意図、心情を理解できるか見てるの」(5話)

※現代文がキーワードになった回。現代文の攻略法と、その理由の奥深い正義に納得感があった。

◆「私はいじめられてなんかいない。あなたたちに嫌われて、私が傷つくとでも思った? 上等だよ、こっちだって嫌いだよ。だけど、勉強道具にだけは触らないで」「泣くわけないでしょ。私は私と、勝負してるの」(7話)

※雅志の回想シーンでの高校時代の春見。学年トップの優秀女子で、ひどい嫌がらせをしてきた子にこの明快さ。その場にいた雅志が7秒で恋に落ちたのがよく分かる。高校時代を演じた永田凛の聡明(そうめい)もすてきだった。

TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS
TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(C)TBS

◆「それまで由利君は私の生徒。あなたの寂しさを埋めるために、あげるわけにはいかない」(7話)

※懲戒後も「必要とされたい」から由利君の理数担当でいたいという女性講師に「必要とされなくなるのが先生だよ」ときっぱり。「生徒が希望する進路に引っ張り、最後に手を離して見送るのが私たちの仕事」。由利君を振り回す春見プロとしてのまっとうな哲学を聞くとホッとすると同時に、「あげない」の強ワードに一瞬驚く由利君の胸の内にもキュンとする。

残りは9話と10話の2回となり、四角関係の行方と由利君の東大受験もいよいよラストスパートへ。どんな心揺さぶる言葉が紡がれていくのか楽しみです。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)