【先週の言葉】「えーっと、何だっけ…。すみません、ガチガチに緊張していて」

9番組16人のアナウンサーが登壇した「20年度NHK新キャスター」発表会見(13日)で、引き続き「ニュースウオッチ9」を担当する有馬嘉男キャスター(54)のあいさつのハプニングです。3年前の同会見でも緊張のあまり違うアナウンサーの席に座ってしまったエピソードの持ち主。今回もまじめで一生懸命な人柄がにじんでほっこりしました。

新担当の和久田麻由子アナに続いてマイクをとった有馬キャスター。「分かったフリをしない」という信条を述べるも、その後は、経済部時代や当時の世相など迷走モードに。「不安が不安を呼ぶ時代に、情報の軸となる番組でありたい」というくだりでは、「不安に、えー。何だっけ」とフリーズしてあせり、和久田アナが「なんか、震えてますよね」とツッコミ。3年前の会見でも準備してきたPRが飛び、桑子アナから「緊張しすぎじゃないですか?」と突っ込まれていただけにチャーミングです。

キャスター交代のタイミングで数年に1度行われる新キャスター会見ですが、画面とはまた違う素のキャラクターが垣間見られてちょっと面白いんですよね。

「おはよう日本」の高瀬耕造アナは、「(真帆と耕造の)まほぞうコンビ」命名などで頑張りましたが「このトークもグダグダで」と苦笑い。中山果奈アナは「特技・変顔」を披露しましたが、美形なので不発に終わりました。「シブ5時」を担当する阿部渉アナは、他局の「5時に夢中」をもじったジョークで意気込みを語るも「特にウケませんでした!」と自虐して着席していました。

日ごろから生放送というスペシャルな場に身を置いているアナウンサーですが、記者会見は別の緊張があるようです。以前、民放の男性アナに聞いたところによると「ニュース読みの訓練は積んでいるが、記者会見なんて場で自分や番組をPRするのは全然別の話。本当に緊張するものなんですよ」。今やAIアナウンサーがニュースを読む時代だからこそ、生身の人間がニュースを伝えていることへの親しみが沸いてもきます。

圧倒的だったのは、ラジオ新番組「らじるラボ」(月~金曜午前8時半)の吾妻謙アナ。「皆さんこんにちは。テレビってキラキラしてるなー、と思って見ておりましたけれども、ラジオにもお付き合いください」とまるでラジオのような軽快な語り口。ラジオをめぐる環境や、番組が実験したいことまで、ラジオの楽しさが伝わってきました。「えー」とか「あのー」とか一切ないラジオのスキルに、高瀬アナがクラクラしながらうっとり聞き入っていたのも印象的でした。

9番組16人、それぞれの意気込みが伝わってきましたので、新年度からどんな番組を届けてくれるのか楽しみにしたいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)