「松竹歌舞伎舞踊公演」取材会での中村芝翫ファミリー。左から、中村歌之助、中村橋之助、中村芝翫、中村福之助(2022年5月撮影)
「松竹歌舞伎舞踊公演」取材会での中村芝翫ファミリー。左から、中村歌之助、中村橋之助、中村芝翫、中村福之助(2022年5月撮影)

【今週の言葉】「皆さま、どうぞ叱りおきのことがあれば、どうぞ叱って、教えてやっていただければ。よろしくお願いいたします」。

歌舞伎座「三月大歌舞伎」(3月3日から)に出演する中村芝翫さん(57)が、14日に行った取材会で語った言葉です。会見終了後、おもむろに取材陣に「あのー」と語りかけ、3人の息子が夏に行う初の自主公演「神谷町小歌舞伎」(6月30日から、浅草公会堂)を陰ながらPRしました。「親が口を出してもいけないが、心配で」という親心に、取材陣もほっこりのひとときとなりました。

「神谷町小歌舞伎」は、長男中村橋之助(27)、次男中村福之助(25)、三男中村歌之助(21)の“成駒屋3兄弟”が初めて企画した自主公演です。子どものころから歌舞伎に夢中で、自宅での「お芝居ごっこ」が日常だったという彼らが、「いつか劇場を借りて自主公演をする」という夢をいよいよ実現させようとしています。

芝翫さんは、「コロナ禍で公演が中止になったり、若手の興行というのはなかなか思うようにできず、力を発揮する場所が限られた」と、若手がここ数年置かれた状況に心を痛める1人。3人の息子もその直撃を受けた世代であり、特に20年3月に高校を卒業した歌之助さんは、歌舞伎俳優として本格的に踏み出した直後にコロナ禍という試練に見舞われています。

だからこそ、たくさんの先輩の信頼を勝ち取りながら成長し、初の自主制作を企画した3人の挑戦に感慨もひとしお。「自主公演と聞いて、今の時期に大丈夫なのかなと思いましたけど、親として制限することはない」と頼もしそうです。

歌舞伎座三月大歌舞伎第2部「仮名手本忠臣蔵」取材会で意気込みを語る中村芝翫
歌舞伎座三月大歌舞伎第2部「仮名手本忠臣蔵」取材会で意気込みを語る中村芝翫

昨年、芝翫さんと3兄弟が共演した「松竹歌舞伎舞踊公演」の取材会にも足を運びましたが、家業にまじめないいファミリーで、応援しがいがあるんですよね。橋之助さんが「父の戦力になるということが僕のいちばんの目標だったので、弟と3人で心して務めたい」と、父への尊敬をド直球で語っていたのも印象に残ります。

先月は、そろって金髪しにした彼らが芝翫さんとともに母三田寛子さんの誕生日を祝う家族ショットが公開されたばかり。息子3人全員金髪という状態にうろたえる三田さんのインスタグラムも話題になりました。自主公演の話題作りにも一役買っており、いろいろほほえましいです。

芝翫さんによれば、3人の性格はまったく違うそうです。以前語ったところでは、「橋之助は“ザ・長男”という気質で、僕よりも父親的に兄弟をまとめてくれる。福之助は家族のムードメーカーでおもしろい男。歌之助はお兄ちゃんの悪いところもよく見てうまく切り抜けていくタイプで、自分を映し出しているよう」とのことです。

橋之助さんのリーダーシップのもと、兄弟の個性が活きのいい歌舞伎を見せてくれそうで、「神谷町小歌舞伎」に興味が沸いてきました。芝翫さんは、自身が主演したNHK大河ドラマ「毛利元就」(97年)を引き合いに、「毛利元就の三本の矢じゃないですけど、息子3人が力を合わせて力強くやってくれれば」と話しています。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)