故5代目桂文枝門下で、失明を克服して高座復帰した落語家、桂文太(62)が11日、大阪・なんばグランド花月で、史上“最遅”の初独演会「ぷれみあむ落語会inNGK」を開き、1席目で感涙した。

 「泣かんとこうと思うてたのに、いきなり泣いてしまいました。いや、すんません。明るう、楽しゅう、いきましょう」

 登場するなり拍手を浴びた文太は長らく頭を下げ、顔を正面に上げても、しばらくは、目を固く閉じたまま。あいさつを終えると、笑顔を取り戻し、高座3席を演じきった。

 文太は三枝(6代文枝)、きん枝、文珍の“桂3兄弟”に次ぎ、71年に先代文枝に弟子入り。地道に高座を務めていたが、50歳のころ、視野が欠けるなどの自覚があり、網膜色素変性症と診断された。その後「難病や言われて、ある日、痛みもなくスーッと見えへんようになった」。それから数年、リハビリを経て、高座に復帰。今回、入門45年、62歳11カ月にして、NGKで初独演会を開催。史上最も遅咲きの花月初独演会となった。

 ゲストとして、笑福亭鶴瓶、中村美律子も出演。中村は、目の不自由な夫を支える女を描いた持ち歌「壺坂情話」のヒットから、盲導犬育成に寄付を続けており、文太の盲導犬も、中村が手掛けた犬だった。この縁から、文太と中村は、親交を深めてきた。

 858人収容のNGKは満席。盲導犬とともに来場した客も多く、盛況で、来年以降も定期開催される可能性が出てきた。文太は「来年もやらせていただけるということです」と報告した。所属事務所によると、詳細は未定だという。