上方のしゃべくりを代表する兄弟漫才コンビ「夢路いとし・喜味こいし」の名作映像が10月28日、大阪・天満天神繁昌亭で行われる「喜味こいし 七回忌追善公演 いとし・こいしの夕べ」で、“復活”することになり、31日、大阪市内で発表された。

 兄の夢路いとしさん(享年78)は03年に死去、弟の喜味こいしさん(83)は11年1月、亡くなった。こいしさんが亡くなって以降、追善興行をしておらず、今回、こいしさんの七回忌にあたることから、兄弟漫才師の酒井とおる(66)らが会見した。

 「いとし・こいし」といえば、上方演芸を代表する名人芸。人を傷つけるような悪口は一切言わず、漫才台本から一言たりとも脱線することはなかった。登場から客席をいじる“遊び”もなくネタに入っても、通用する腕を持っていた。

 とおるは「僕らとてもまねできません。どうしても、出て行ったら、お客さんに愛想振って、落ち着いてからしかやれませんもん」と、いまだ追いつけない芸域に感服するばかり。一方で、私生活では腰の低さでも知られ、とおるは「僕らもそこは、今仕事をさせてもらえる感謝の気持ちは忘れないようにと思いますね」と話した。

 いとしさん、こいしさんと父の故桂米朝さんが親交のあった落語家、桂米団治(58)は「僕がちっちゃい子どもの頃から『おじいちゃんっぽい』イメージがありましたね」と言い、職人肌の2人を回顧。奇をてらわず、呼び方も「君と僕」で徹底した品のある漫才には「いとこいさんの漫才は、お客さんの前へ出て頭を下げて、すぐ始まる。まくらをしないとこも合わせて、落語でいえば(故3代目桂)春団治師匠みたい」としのんだ。

 また、こいしさんの娘で女道楽の喜味家たまご(61)は「よく家で稽古をしていました」と振り返り、ボケるいとしさんを、こいしさんが引っ張る舞台上のイメージとは「全く逆だった」と語る。

 2人の名人芸は、兄いとしさんが主導し「ボケながらも、ものすごい脳みその回転で、先を読んでいた。だから、いとこい漫才は、こいしはいなくても出来たけど、いとしがいなければ出来なかった」と話した。

 追善公演には桂ざこば、米団治、酒井くにお・とおる、立花家千橘、幸助・福助、豊来家板里・玉之助が出演。「いとし・こいし」の映像は3本を予定し、作品については現在、選考作業中だという。米団治は「私はファンの1人として、お客様の気持ちで楽しみです」と語った。

 また、第5腰椎圧迫骨折後遅発性神経障害のため休養し、今月29日に手術を受けた酒井くにお(69)について、相方とおるは「口は達者で元気、もう今日からリハビリを始めます。予定通り1カ月以内に退院できそうです」と報告した。