リリー・フランキー(53)がニッカンスポーツコムの単独インタビューに応じた。主演映画「パーフェクト・レボリューション」(松本准平監督、29日公開)で、障害者の恋愛や性について啓発する活動を、車いす生活の中で続ける脳性まひの活動家・熊篠慶彦氏(47)をモデルにしたクマを演じた。10年来、親交がある友人を演じた今回は作品への向き合い方、完成後の関わり方まで変わったという。特別になった作品のこと、俳優業、さらには結婚についても語った。

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 -怪しげな男を演じることが多いが、今回はこれまでとは全然、違う役どころ

 リリー 大体、僕が演じるのは怪しい編集者、ホームレス、麻薬中毒者、殺人犯…これらを循環してやってますからね(笑い)それと、人と出会って恋愛する役って、映画では初めてなんじゃないかな? 恋愛していたものの、冷えきっている夫婦か、あとは不倫しているか、という役が多いので…恋愛絡みっていうのが、あまりないんですよね。

 -大作、話題作から小規模でも味がある良作、映画からテレビまで出演が絶えない中、今作の位置付けは

 リリー 自分の友達がモデルになった役を演じたことがなかった。唯一、みうらじゅんさんのお父さんをやった、お父さんにお会いしたというのはあったけれど、友達が伝えようとしていること(と活動)を10何年、見てきたことを(役を演じる形で)代弁するということなので、ただ映画に出て演じるのとは、出る意味合いが最初から違っていたのかも知れませんね。今回、映画が1本出来たということよりも、熊篠がやっている活動が映画になったことの方が自分としては、ずっと意味が大きい。1個の映画が出来た、ワーイ! という感じじゃないんですよね。

 -「専業の俳優じゃないから基本的に監督の指示通りやる」と言ってきた。ただ今回は、スクリーンに映る姿から全て違って見える

 リリー いつも現場に行ったら、監督の言いなりというか、あまり意見をすることもないですけど、今回は相当、監督に言いましたし、出来上がりかけている時も、いろいろ言いました。台本に対する疑問とか「熊篠は普段、こういうことを言っているのに、セリフが足らないと思う」とか、現場でドンドン、自分でセリフを足していったりとか。最後まで言ったのは「大風呂敷を広げたタイトル、どうにかならないの」って…監督が気に入っているらしく変えてくれないですけど(苦笑い)

 -今回はメジャーの大作ではないが、北海道から九州まで全国53館で公開

 リリー よく、それだけ開いたなと思いました。単館の劇場で公開されて、2館くらいで上映して終わりだと思っていました。大手のシネコンチェーンでも上映されると、プロデューサーは喜んでいたんですが、公開2週目で1日1回上映とかになっちゃうじゃないですか? そんなだったら、単館の劇場で1日4回とか、かけて欲しいんですよ。

 -確かにシネコンでは、単館系の作品は公開2週目以降は、朝かレイトショー(夜遅い時間帯の上映)で1日1回上映になりがち

 リリー 最初からヒットうんぬんじゃないから…なるべく人に伝わる環境というんですかね。なかなか難しいことですけど、最後(公開後)まで考えてやらないと。大手のシネコンで1週間、かかっても…どうせ、この映画、ヒットなんかしないんだから、次の週から朝イチ1回上映みたいなことになってくる(苦笑い)障害者に見せる術とか、いろいろな方法を考えてやっているのに、時間を区切って朝イチから見せるなんて本末転倒。単館系の劇場に階段しかなくて、障害者が入れないじゃないかという話になっても…本気で見せようと思ったら、映画館の人だって介助しますよ。自分が出ている映画も結構、客観的に見られるんですけど、出来上がりを見て、自分の中では面白いのかなぁと。映画としてはポップになっているし、いろいろな人に見てもらいたい。

 -ところで、私生活の近況は。恋愛、結婚は?

 リリー 井上陽水さんと夜、メールをやりとりしていて「あなたもね、こんな時間にじいさんとメールのやりとりしてるくらいなら、婚活しなさいよ」って言われたんですけど…いやぁ、もう、これは完全に何か行き遅れたばかりか、暗礁に乗り上げてきましたね。

 -暗礁に乗り上げた独身中年男性は、世の中に少なくない。どうしたらいいか?

 リリー 陽水さんが言っていたのは「あなたね、人生で1回も結婚しないなんて、そんなソツのない生き方しちゃダメ。もっと結婚とかして、もがきなさいよ」って言うんです(苦笑い)大変なんだろうなぁって思ったら、樹木希林さんも「あなたねぇ…結婚なんてものは、若いうちにしておかなきゃダメよ。分別がついたら、そんなの出来ないんだから」って(苦笑い)

 -親友の福山雅治(48)も15年9月に吹石一恵(34)と結婚し、16年12月に第1子の誕生を発表し、父になった

 リリー ねぇ…。実際に周りの友達が結婚していき、親になる風景を、ずっと、ず~っと、それだけを眺めてきたじゃないですか。やっぱり人がどう変わっても、自分のところは何も変わらないというか…ずっと取り残されている感じがするんですけどね。

 -まだ暗礁?

 リリー さらに、分からなくなってきている感じですかね(笑い)

 いつもとは違うリリー・フランキーがスクリーンのなかにいる。それが1番の「パーフェクト・レボリューション」かも知れない。【村上幸将】

 ◆「パーフェクト・レボリューション」 脳性まひを患い、車いす生活を送るクマ(リリー)は障害者の性と恋愛への理解を訴え、活動をしている。ある日、講演会に駆けつけた風俗嬢ミツ(清野菜名)から「好き」と告白され、半ば強引に恋愛を始めることになる。クマが頭を強打し、救急搬送されたことをきっかけに、人格障害を抱えるミツは精神のバランスを崩す。