プロ野球ヤクルトや阪神で監督を務めた野村克也氏(82)の妻でタレントの野村沙知代(のむら・さちよ)さんが8日午後4時9分、都内の病院で死去した。85歳だった。

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 沙知代さんは野村氏にとって、最大の理解者であり、最高のマネジャーだった。野村氏は評論家時代から、あまりに厳しく直接的な批評、評価は一部を納得させはしたが、同時に内外に多くの敵も作った。だが相手が業界の大物だろうが、マスコミ、一ファンだろうが、その敵に真っ向から食ってかかり、取材拒否の壁となり「野村克也」を守ったのは沙知代さんだった。

 2人の出会いの直後を野村氏が、こう話したことがある。「ちょっと、その辺にいる女性とは雰囲気が違ったんだ」。サングラスを小粋にかけ、英語も話せる。自身を「ど田舎の赤貧育ち」と言う野村氏に別世界を感じさせてくれる女性だった。はっきりと自己主張し、テキパキと行動する。自分にはない、憧れるものもあった。

 ヤクルト監督時代、92、93年と連覇し、沙知代さんのマスコミ露出度も極端に増えた。また敵も作った。当時の野村氏はこうも話した。「あいつも寂しい女でな。誤解されるタイプでなあ」。テスト入団したプロ野球で、一代を築いた野村克也。言動で突っ張ろうとする沙知代さんに共通する何かを感じていたのかもしれない。【井元秀治】