個性的なメーキャップとキャリアウーマンネタで瞬く間にブレークした。お笑いタレントのブルゾンちえみ(27)。昨年まで誰も知らない存在だったが、今やテレビで見ない日がない快進撃が続いている。突然脚光を浴びて、さぞかし心地良かったかと想像するが、意外にも悩む日々が続いていたという。

 

★あまりに急に売れて気持ちがついていかなかった

 

 ブルゾンは今年元日、お茶の間に突然現れた。無名に近い若手お笑い芸人が、ネタを披露して面白さを競い合う日本テレビ系「ぐるナイ! おもしろ荘」。前髪を切りそろえたおかっぱの黒髪と、白いブラウスにタイトスカートというOLファッション。2人のイケメンを従え、「ブルゾンちえみwith B」としてリズムに合わせて踊りながら、恋愛下手な女性に、できるキャリアウーマンが指南する。

 「男は、ガムと一緒。味がしなくなったら、また新しいガムを食べればいい。だって地球上に、男が何人いると思っているの…35億!!」

 正体不明の個性的な女が上から目線のアドバイスをするインパクトがうけた。オーディション参加859組の大激戦を制して優勝。放送直後から、各局バラエティー番組の出演依頼が殺到した。昨年までテレビ出演の機会など、ほとんどなかった。浮かれてもいいはずだが、むしろその逆だった。あまりに急に売れたため、気持ちが付いていかなかった。

 「芸能界に友達とか仲の良い人がいるわけでもなく、芸歴も浅いので、今年の前半は孤独を感じていました。『悩みじゃなくて、うれしいことじゃん』って思われるかも知れないとか考えて、先輩にも気を使ってしまって、誰にも相談できませんでした」

 引っ張りだこの状態は続き、悩みは解消できなかった。転機は意外なところで訪れた。ドラマの収録現場だった。4月スタートのフジテレビ系ドラマ「人は見た目が100パーセント」にレギュラー出演した。女優デビュー作で、人気女優の桐谷美玲(27)水川あさみ(34)と3人組で展開していく恋愛ドラマだった。

 「3月くらいから撮影が始まったんですけど、水川さんと桐谷さんと出会い、芸能界で初めて、何でも相談できる人ができました」 バラエティー番組では、毎回出演者が入れ替わったり、共演しても収録が終わると、「お疲れさま~」と言って別れ、しばらく顔を合わせることがないことも多い。ドラマは違った。

 「毎日撮影でお会いしているうちに、部活の先輩みたいな、何でも言えるような信頼ができるようになりました。食事や外出の仕方など、芸能人のノウハウなんかも質問しました(笑い)」

 抱えてきた孤独感や不安が徐々に解消された。バラエティーに出演するお笑いの先輩や仲間とも、以前より、自然に接することができるようになった。

 

★父の影響で教員目指すも島根大教育学部を3年で中退

 

 人気に火を付けた「キャリアウーマン」ネタは、米歌手オースティン・マホーン(21)の「ダーティ・ワーク」ありきで生まれた。

 「私の場合、曲を聴いてネタを作っていくんです。昨年11月ごろ(オーディションの)ネタ見せの前日にYouTubeで、ミュージックビデオ(MV)を見ていて、たまたまオースティン・マホーンの曲にたどり着きました。MVの映像に登場するオフィスと、曲の感じで、オフィスのいい女、みたいなネタにしようと思いつきました」

 その数カ月前まで、ネタがまったく思い浮かばなかった時期が続いた。番組オーディションを兼ねた“ネタ見せ”に行けないことが何度もあり、マネジャーに怒られることもあった。ところがオースティンの曲に運命のようなものを感じたこともあり、そのままネタ見せの会場に向かった。

 「とりあえず行こうと思って、曲だけ決めて会場に行きました(笑い)。でも何もセリフが決まってないんです。ネタ見せする前、(エントリー用紙に)自分で名前を書いていくんですけど、最後に名前を書いてそれまでに考えようって。そんな状態の中でネタができたんです」

 当時は、思いつきで披露したネタだったが、実は完成度は、今とほとんど変わっていないという。

 岡山県で生まれた。教員だった父親の影響もあって島根大教育学部に入った。しかし、教師を目指す気持ちは中途半端だった。同級生に比べ、情熱が足りないのではと感じた。「100%なりたいっていうものを探したい」。大学を3年で中退して実家に戻った。もともと映画や音楽などエンターテインメントが好きだった。劇団に入ったり、音楽学校にも通った。23歳の時に上京してタレント養成スクールに入学。お笑い芸人を志すようになった。

 「今もドラマに出られるのはうれしいですし、楽しかった。今後もやりたいですね。劇団に行って、歌の学校にも行って、今、お笑いをやっていますが『自分が今までやってきたことが無駄じゃなかった』って、しみじみ思います」

 8月には、日本テレビ系「24時間テレビ」のチャリティーマラソンランナーとして90キロを23時間55分かけて完走した。ブルゾン効果もあって、番組の平均視聴率は歴代2位の18・6%を記録。ゴール場面は、89年以降で記録が残る中で、歴代5位の40・5%の高視聴率となった。

 「もともと小学生の頃に陸上を始め、長距離だったのですが、大学時代にいろいろ悩んだ時期に、体重が30キロくらい増えて走れなくなっていた。だから走っていて、うれしくて仕方なかったです。今も体重は8月のマラソンの時と変わってない。健康維持のため走っています(笑い)」

 

★「35億」旋風から2020年には知識のある大人に

 

 売れっ子になった今も、違和感は抱いている。

 「自分が、やったことなんですけど、自分のことだと感じられない。映像を見れば自分の名前だし、自分の顔なんですけど。いまだに『夢かもしれない』と思ってます。不思議な感覚なんですけど、いつ実感が湧いてくるのかな。今こうやっている自分の外見と中身が、うまく釣り合っていないと思う。気持ちが追い付けてないんでしょうね。早く実感が湧いて、より責任感をもって仕事をやりたいと思っています」

 イメージしている目標もある。

 「30歳になる2020年を基準に考えています。30歳になったら、五輪もあるし、ちゃんとした大人になっていたい。マツコ・デラックスさんのようないろんなジャンルの知識のある大人になっていたい。人間として何でも語れる大人になることが今の目標です」

 風貌やネタを見ると、どこか計算も感じるが、ここまでの道のりや決断などを知ると、実は直感がとても鋭い人なのでは、と思ってしまう。

▼with Bのブリリアン・コージ(29) 「感謝の気持ち」をとても大切にされている人です。どんな時も感謝の気持ちを持って取り組む姿勢を後ろから勉強させていただいています。

▼with Bのブリリアン・ダイキ(30) 「どんなに忙しくてもつらい顔、疲れた顔を見せないブルゾンさんは本当に強いカッコいい女性だと思います。18年も一緒に頑張っていきます。

◆ブルゾンちえみ

 1990年(平2)8月3日、岡山県生まれ。ワタナベエンターテイメントカレッジを卒業した15年にデビュー。今年の「R-1ぐらんぷり」で決勝進出。4月にフジテレビ系ドラマ「人は見た目が100パーセント」に出演。5月からNTTドコモでCMにも出演。8月に5人組ユニット「Royal Flush」結成。155センチ。

◆with B

 ブルゾンちえみの所属事務所の後輩、ブリリアンのコージ(徳田浩至=29)とダイキ(杉浦大毅=30)のコンビ。ワタナベエンターテイメントカレッジ卒業後の16年10月、ブルゾンから声を掛けられてユニットを結成。