池井戸潤氏の小説をドラマ化し、役所広司(61)が15年ぶりに連続ドラマに主演した、TBS系日曜劇場「陸王」(日曜午後9時)が24日、最終回を迎える。ニッカンスポーツコムでは22日から24日までの3日連続で、これまで放送した9話を振り返る特集を連載する。1回目は1話から3話を振り返る。(かっこ内の%は視聴率)

 ◆1話(10月15日放送、14・7%)

 埼玉県行田市の足袋製造「こはぜ屋」の四代目社長・宮沢紘一(役所広司)は、足袋の需要が落ち、資金繰りに頭を悩ませる。その中、埼玉中央銀行の融資担当・坂本太郎(風間俊介)から、新規事業の提案を持ち掛けられ「裸足感覚」を追及したランニングシューズの開発を思い付く。

 宮沢は息子の大地(山崎賢人)と、箱根駅伝でしのぎを削った実業団ランナー茂木裕人(竹内涼真)と毛塚直之(佐野岳)が出場する豊橋国際マラソンを見学。その中、40キロ地点過ぎで茂木が左太ももを痛め途中棄権したが、最後まで走ることを諦めようとしなかった姿を見て、宮沢はシューズの開発に着手した。

 試作品はインストラクターの有村融(光石研)に、ケガをしにくいミッドフット着地走法習得に適したと評価されたが、生ゴムで作ったソールはランニングシューズで求められる耐久性は望めなかった。宮沢は試作品を茂木に届けたが、一方で経営は傾き、銀行からはリストラを提案される。

 名ぜりふ 

 <宮沢紘一>「自分の仕事に責任を持てないヤツは何をやっても駄目だ」

 「百年前に足袋を作り始めたというのも、絶対にうまくいく保証なんてなかったのに…でも、その挑戦があったから今があるわけだ。将来のことを考えたら、古いものを守るために古いことばっかりやってちゃ駄目なんじゃないかって思うんだよ」

 「うちの足袋をはいたことがないあなたに、うちの何が分かりますか?そんな銀行員に、うちの未来をどうこう言えるのですか?」

 ◆2話(10月29日放送、14・0%)宮沢は、こはぜ屋存続のために「陸王」開発の覚悟を決めたが、道のりは遠く険しかった。懸案のソールは以前、坂本から紹介された繭で作られた特殊素材「シルクレイ」を思い出したが、特許を持つ飯山晴之(寺尾聡)は、2年前に自社を倒産させてしまい消息不明。宮沢は坂本の助けもあり飯山と対面したが、年間5000万円の特許料を要求された揚げ句、飯山は米大手と契約を結ぶ話を進めていた。

 宮沢は粘り強く飯山に食らい付き、こはぜ屋に呼び、仕事ぶりを見せ、かたくなな心を動かす。直後に、飯山は米大手との契約話をほごにされ、宮沢に特許を託す代わりに、開発チームに自身を入れるよう要求する。一方、茂木はランナーにとって致命的な半腱様筋の部分損傷を負い、大手メーカー・アトランティスからスポンサー契約の一時停止を通告されて、初めて陸王を履いて走る。

 名せりふ

 <宮沢紘一>「ケガをしない走りこそ、勝利への最短距離です」

 「飯山さんは誰も考え付かなかったことを成し遂げた。そういう努力は、小ずるい人間や性根の座っていないヤツには出来ない。私は飯山さんを信用します」

 <飯山晴之>

「あんたのせいで、思い出しちまったよ…シルクレイ、作った時のこと。あんたにも味わわせてやるよ…あの興奮を」

 ◆3話(11月5日放送、15・0%)飯山は「陸王」の開発チームに入り、こはぜ屋にシルクレイ製造機を持ち込むと、開発のサポート役に大地を指名した。2人はソールに適した硬さのシルクレイ開発に取り組むが、困難を極める。

 茂木は陸上雑誌から毛塚との対談を求められながら、話がなくなり言葉を失う。茂木を支えるシューフィッターの村野尊彦(市川右團次)も上司の小原賢治(ピエール滝)にソールを薄くするよう申し出るが、却下される。その中、宮沢と初対面し、陸王の試作品を履いて走り素晴らしさに感嘆する一方、ソールが薄く実用向きでないと伝える。

 飯山と大地は、寝る間も惜しんでシルクレイの硬度調整に没頭するが、うまくいかない。その中、飯山は徹夜明けに冷めたコーヒーを飲み、味が変わったことで繭を煮る温度を変え、硬度を変えるアイデアを思い付く。そして、硬度55・1と、ソールに適した硬さのシルクレイが完成した。

 名せりふ 

 <宮沢紘一>「いいかげんだろうと、ハッタリだろうと、ウソだろうと、そう信じて頑張るしかないじゃないか。ウソから出た真というのもあるだろう? それぐらい強く思っていれば、必ず道は開ける」

 「失敗した時のことより、まずはどうしたら成功するかを一緒に考えていただけますか?」

 <飯山晴之>「待たせて、悪かったな」

 <茂木裕人>「何て言うか…いい違和感というか、不思議な靴ですね。靴に走らされているような…履き心地は悪くないです」