【カンヌ(フランス)16日(日本時間同日)=小林千穂】細田守監督(50)の新作アニメ、上白石萌歌(18)が主演声優を務めた「未来のミライ」(7月20日公開)が、カンヌ映画祭の監督週間部門で公式上映された。2回の上映ともに満員御礼。作品にとって最高のスタートを切った。初カンヌの2人にとっても忘れられない1日になった。

 この日は2回の公式上映が行われ、1回目500席、2回目850席ともに満員となった。2回目は約200人が入場できなかったほどで、終了後には約6分のスタンディングオベーション。細田監督の目には涙が光り、上白石も「胸がいっぱい」と感激した。

 同作は4歳のくんちゃん(上白石)が、未来から来た妹ミライちゃんと一緒に、家族の歴史をたどる物語。数日前まで製作が続いていたそうで、カンヌがワールドプレミアであり、関係者が見る初号試写でもあった。

 くんちゃんと妹の場面に笑いが起こり、兄としてのくんちゃんの成長に感嘆の声がもれた。辛口で知られるカンヌの観客だが、上映中に席を立つ人はほとんどいなかった。終了後は温かい拍手に包まれ、Q&Aは20分以上続いた。

 細田監督は「拍手をもらってホッとしています。観客が見終わって映画は完成するので、作品が誕生する、まさに瞬間に立ち会えました。祝福されて生まれてきたのかな、とホッとしました」と喜んだ。

 これまで多くの海外映画祭に参加経験があるが、今回はプレミア上映ということでプレッシャーも大きかった。「国内で見てもらって安心感をもって海外映画祭に行くのと違って、大変だと身をもって感じました。いやはや」と、緊張感から解放されたように笑った。

 映画祭自体が初めての上白石だが、強心臓なところを見せた。舞台あいさつはフランス語で自己紹介し、観客を喜ばせた。終了後には「カンヌでプレミア、初号を見られて幸せです。前日はよく眠れたんですが、安心してなおさらいい眠りにつけそうです。日本でも自信を持って広めていきたい」と語った。

 姉で女優萌音(20)には「いいなあ」と、参加をうらやましがられたという。家族の物語を描いた作品だけに「1人でも多く、家族のことを考える人が増えればいい」と、自分たちにも重ね合わせていた。

 現在、すでに88の国と地域での配給が決まっている。カンヌ映画祭をきっかけにさらに増えることが予想されており、一層の広がりが期待される。