先月2日に慢性閉塞(へいそく)性肺疾患で亡くなった落語家桂歌丸さん(享年81)をしのぶ興行「桂歌丸追悼 8月中席」が東京・国立演芸場で行われている。

 楽屋口を入ってすぐのところには、歌丸さんの写真パネルが置いてあった。毎年、同演芸場での8月中席は、歌丸さんがトリを務める恒例の興行だった。出演者は歌丸さんに見守られて、もしくはプレッシャーを感じながら、高座に上がることになる。

 初日のトリは春風亭昇太。まくらで、歌丸さんが亡くなったことについて行った会見を振り返り「頭の中は悲しいんですけど、並ぶとおもしろいことを言いたくなる」と、思わず出てしまった落語家の習性を明かした。

 「じめじめするより、笑ってもらう方がいい。僕だって、亡くなったら、黒白の幕じゃなく、紅白の幕を使ってほしい。『おめでとう!』みたいな感じで。どうせ1人で死んでいくんだから…」と独身キャラを見せると、観客も大笑いだった。歌丸さんも時折かけた「壺算」でさらに観客を笑わせ、明るい初日となった。

 終演後、取材に応じた昇太は「こののち、桂歌丸という人がいないということが、ボディーブローのように効いてくるんだと思います。なかなか実感沸かないですね」と、しんみり語った。

 楽屋口に飾ってある歌丸さんの写真について聞くと「あえて見ないようにしました。これからお客さんを笑わせようとしてるので…」。さみしさや喪失感を隠して高座に上がっていたことを、あらためて感じた。

 昇太は初日の高座を終え、やっと歌丸さんの写真を見ることができた。「(歌丸さんと)同じことはできない。まねたり寄せたりはしないけど、ちゃんとやんなきゃという責任を感じます」。