中村吉右衛門(74)が東京・歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」(9月2~26日)で、昼の部「河内山」夜の部「俊寛」に主演する。「秀山祭」は養父初代中村吉右衛門の芸を伝承するための公演で、2演目ともに初代が磨き上げた舞台。

 吉右衛門は「『俊寛』は初代が魂を込めて演じた。夢はパリ、ロンドンでやること。フランスもイギリスも流刑地があるので、島流しの『俊寛』は分かりやすいでしょう。『河内山』はどなたも喜んでもらえる作品で、私も楽しんでやりたい」。今年は初舞台から70年目。最近、日本経済新聞の半生を語る記事で、20代の頃に「ガス管をくわえたことも」と衝撃告白した。「(名跡を)継いでいいのか悩んだ時期もあった。ダメだ、ダメだと思いながら、階段を1歩ずつ上がってきた。目標は80歳で『勧進帳』の弁慶をやること」。

 11回目となる今回は中村梅玉、松本幸四郎、尾上菊之助らの出演に加え、昼の部「金閣寺」で病気療養中の中村福助(57)が5年ぶりに復帰する。吉右衛門は「復帰は慶事。初代は(福助の曽祖父の)5代目(中村歌右衛門)と親しく、私も6代目に教わり、親近感を持っている。秀山祭で復帰もご縁です」と喜んだ。【林尚之】