話題の映画「カメラを止めるな!」をようやく見た。どうせなら東京・日比谷にリニューアルした大スクリーンで、と前日夜にネットで昼の回のチケットを購入する。座席表示では残りは5割程度。2館から100館超えと公開規模が拡大したにも関わらず、なかなかの人気だと思った。

 翌日劇場を訪れると、さらに驚かされた。上映1時間前にチケットは完売だ。お盆期間とはいえ、平日のお昼。ヒット大作でもなかなかお目にかかれない光景だ。客層は30~50代くらいのカップル中心。購買力のある中心層の心をしっかりつかんでいる。

 さて上映。きっとリピーターなのだろう。冒頭のさわりの部分から笑い始める観客がぽつぽついる。後半に入ると大多数の初見の客からもどかんどかん笑いが起こる。ネット上の感想にあるように最後は不思議な感動も覚えた。

 多く語られているように、詳述すると興趣をそぐ作品。ひと言でいえば「面白い。だけど、詳しくは言えない」となる。この典型的な感想が口コミ力を増幅しているのも確かだ。

 冒頭から37分のワンカット撮影にまず緊張感がある。製作費300万円の作品ならではのチープ感はもちろんあるが、これを逆手にとって強みに変えるような仕掛けが心憎い。重層的な脚本が素晴らしい。それぞれに個性の立った俳優陣にも熱がこもっていて、「映画の力」を改めて実感する。

 数カ月前、確か1回限りの試写状をいただいた。スケジュールが合わなかったこともあったが、「チープなゾンビ映画か」と高をくくっていたところがあったのは否めない。猛省である。

 ともあれ、今年を代表する1本。上田慎一郎監督とスタッフ、キャストに拍手、拍手…。