女優の樹木希林(きき・きりん)さん(本名・内田啓子=うちだ・けいこ)が15日午前2時45分、都内の自宅で亡くなった。75歳だった。

希林さんは15年5月、出演した映画「あん」(河瀬直美監督)が「ある視点部門」でオープニング上映されたカンヌ映画祭に72歳で初参加した。取材を申し込むと、13年春に「全身がん」の宣告を受け、体調も良くないため、取材は30分以内が条件だった。

正午前に指定された宿泊先近くの小さな食堂に行くと、希林さんは「のどが渇いた…あなた、ビール飲みながらでもいい?」と言い、お勧めメニューを自ら選んだ。「ボンゴレ、おいしいのよ。こんなに濃厚な貝の味がするの日本で食べたことないわよ」とご機嫌で取材は3時間にも及んだ。

希林さんは、内田裕也と40年以上続けた別居婚についても語った。「たまに会うからいい。私はずっとは勘弁。向こうも、そう言う。『幸せかどうか分からないけど離婚しないで良かった』と言うんだから。いいとこどりをしてるわけ」と笑った。「あの人は『奥さんの方がロックンロールだったんじゃないか』と言われている。夫をほっぽりっぱなしにしたから、悪かったかなとも思うけど…無理だとも思うし」とも。

その後、こうも続けた。「内田のお姉さんから『死ぬ時は裕也の首絞めて死んでいってよ。世間にご迷惑だから』と言われてるの」。そう言い放った後に、ビールを飲んで口を大きく開けて笑った、希林さんの顔が忘れられない。【村上幸将】