宝塚歌劇団雪組トップスター望海風斗(のぞみ・ふうと)、トップ娘役真彩希帆(まあや・きほ)の当代きっての実力派トップコンビが9日、兵庫・宝塚大劇場で、大作ミュージカル「ファントム」の初日を迎え、そろって美声を響かせた。

今作は、ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」をもとに、91年の初演以降、世界各地で上演。宝塚では04年に宙組で初演され、オペラ座地下に潜む「怪人」と呼ばれた主人公エリックの心の葛藤を鮮明にし、悲劇の結末をよりドラマチックに描いた。

望海が在籍していた花組で06年、11年にも再演され、今回が7年ぶり4度目の上演。歌手にあこがれながらも顔に傷を持つゆえ、夢を封印しているエリックが、地上から「天使の美声」を耳にし、指導をするうちに師弟関係から心情が愛、恋へと変化していく様を描く名作だ。

望海は「仮面の奥に隠されている繊細な心。孤独に生きてきたゆえに、ささいな日常を幸福に感じる。喜怒哀楽、微妙な心の動きを大切にしたい」と言い、稽古に励んできた。

望海は前回主演の元花組トップ蘭寿(らんじゅ)とむに、以前から「いつか、ファントムを(主演)したい」との夢を伝えており、蘭寿の退団時には、エリックゆかりのアクセサリーを譲り受けていた。「願えばかなう」と、満願成就して臨む今作。望海の相手役を務める真彩も同じく、あこがれの作品だった。

真彩は、類いまれな美声を持つヒロイン・クリスティーヌを「作品の歌詞にもあるんですが、夢を追い続ければ願いはきっとかなう-そんな強い信念を持った女性」ととらえ、一途にヒロイン像を築き上げてきた。

今の雪組は望海、真彩とトップコンビそろって、抜群の歌唱力を誇る。楽曲の掛け合い、ハーモニーが鍵を握る今作だけに、開幕前から期待値は高かった。

望海は「個々の思いをしっかり持った上で、歌を、呼吸を合わせることが大事。真彩の出すクリスティーヌ(像)によって、エリックが変わっていくこともある」と、芸達者同士のぶつかりあいで、さらなる進化も予告。真彩は、望海とのデュエットで「(エネルギーが)何倍にもなるような気がします」と話している。

2番手スターの彩風咲奈(あかやぜ・さきな)は、オペラ座を解雇された前支配人キャリエールを演じ、トップコンビとからむキーパーソン役を好演。劇場のパトロン、フィリップ伯爵役は彩凪翔(あやなぎ・しょう)、朝美絢(あさみ・じゅん)が役代わりで演じ、初日は彩凪が熱演を見せた。

宝塚大劇場公演は12月14日まで。東京宝塚劇場は来年1月2日~同2月10日。