10月13日付での退団を発表している宝塚歌劇団星組トップ、紅(くれない)ゆずると、相手娘役・綺咲愛里(きさき・あいり)のプレ・サヨナラ公演となる「楽劇(ミュージカル) 鎌足-夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し-」が5日、大阪市北区のシアター・ドラマシティで開幕した。大阪公演は13日まで、東京・日本青年館ホールは19~25日。

令和時代が幕開けてから初の大阪公演。大化の改新を舞台に、日本最初の元号「大化」を墨字で紙に記して発表するシーンがあり、本来出すべき「大化」の直前に「令和」と掲げ、わき上がる場面もあった。

宝塚歌劇の場合、1年以上前から主演スターにあわせた作品が計画され進行。「令和」の出典元となった万葉集の世界を描いた今作が、新元号初の同劇団大阪公演になったことは偶然だった。

紅は、終演後のあいさつで「5月1日より令和の時代が始まりました。このタイミングで大化の時代をさせて頂くことに大変深い縁を感じております」と感慨深げに語った。

演じたのは、改革の中心人物の1人で、己を貫き大化の改新を遂げた中臣鎌足。幼少時から思い焦がれた男役を、ぶれることなく突き詰め17年、歩んできた紅自身の道と重ね、作品の鍵でもある「志」を心に宿し、役作りに励んだ。

プレ・サヨナラの初日を迎え「演出の生田(大和)先生が、わたくしたちの知る歴史の点と点をつなぎ合わせて、夜空に浮かび上がる星座のごとく、物語をつくり上げてくださりました」とスタッフにも感謝した。

紅と同時退団を発表しているトップ娘役の綺咲愛里(きさき・あいり)は、鎌足が心の支えとする幼なじみ役。紅、綺咲らは今回、子役時代からを自らが演じた。鎌足といえば、宝塚では悪役が「定説」。紅は鎌足の新たな側面を見せたいと意気込む。

「宝塚の中臣鎌足はすごい悪役のイメージでしたが、それを今回、一気に変える。今回の鎌足は、すごい純粋で誠実な青年。鎌足を中心にすることによって、(宝塚での鎌足像の)見え方が変わってくるはず」

男役集大成目前の今、新たな形を提示する覚悟だ。

今作の後は、7月12日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する「ミュージカル・フルコース GOD OF STARS-食聖-」「スペース・レビュー・ファンタジア エクレール ブリアン」が控える。紅と綺咲は同作を最後に退団する。