片岡愛之助(47)が、東京・歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」(10月2~26日)で、昼夜3演目に出演、計7役を務める。

歌舞伎座で、3演目でメーンどころの役をつとめるのは愛之助にとって初めて。このほど、京都市内で取材に応じ、意気込みを語った。

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取材を行ったのは、上演中の京都・南座での「東海道四谷怪談」の出演後。二枚目で悪人の伊右衛門を演じ終えてすぐ、10月の公演について話してくれた。

「芸術祭十月大歌舞伎」では、「御摂(ごひいき)勧進帳」での初役、「蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)」での5変化に早替わり、「三人吉三巴白浪」では10年ぶりの役、とさまざまだ。3演目で計7役になると言うと、愛之助は「そうか、そんなになるんか!」と言い、「歌舞伎座でこんなにたくさんのお役をやらせていただくのはありがたいです。どの役も同じように好きになり、役を作り上げていくだけ」と、自然体で挑む気持ちを見せた。

歌舞伎座ならではの演出を考えている。「蜘蛛絲-」は3回目の出演だが、初回は約350人の劇場、2回目は花道のない劇場だった。愛之助は「舞台が広いから豪華に、前回と違う工夫をして、歌舞伎座に合ったものを作ります。(早替わりのため)走る距離が長いなあ」と笑った。

「三人吉三-」では、10年ぶり2回目のお坊吉三をつとめる。作者・河竹黙阿弥の七五調のせりふが美しいが、叔父片岡仁左衛門の教え、あまりうたいすぎないように、を大事にする。愛之助は「気持ち良くなりすぎてもだめ、少し自分に酔ったところもないとだめ。加減が難しい」。

妻で女優藤原紀香(48)からの刺激も大事だ。取材時、東京・明治座での藤原の主演舞台「サザエさん」の話になると「(南座の)休演日に行きます。あっちも満杯やし、こっちも満杯。うれしいしありがたい。(ネタバレ)言わんといて~」。後日、ブログで観劇報告し「たくさんのパワーをいただけた」と記した。

この10年、公私ともに環境は大きく変化した。愛之助は「成長したなとか、変わったなとかはお客さまがどう感じてくださるかです」と気負いなく語った。【小林千穂】