昨年末、韓国映画界を代表する俳優ソン・ガンホ(52)とポン・ジュノ監督(50)が来日した。

2人のコンビ作として知られるのは「殺人の追憶」(03年)だが、以来4作目となる「パラサイト 半地下の家族」が現在公開中で、来日はこのPRのためだった。

実際の連続殺人事件を題材にした「殺人-」では、刑事役のガンホが雨の中、泥まみれになって走る姿が記憶に残った。今回も格差問題をテーマに貧困家庭の父親としてのたうつような演技が印象的だ。

ガンホは「監督から今回のお話をいただき、当然、金持ち家族の役と思ったのですが、またまた汗まみれ、泥まみれの役でした」と冗談めかして話した。ジュノ監督は「ガンホ先輩の演技は予測不能なところがあって、最初に観客になれることは最高の幸せです。いつも背中を押されている気がします」と最大級の賛辞を贈った。

表現方法は違っても、2人の揺るぎない信頼関係が伝わってきた。

日本で言えば、近作「記憶にございません」でコンビを組んだ中井貴一(58)と三谷幸喜監督(58)の関係がこれに似ているかもしれない。

中井は「わがままな監督が多い中で、三谷さんは役者の体調から時間の制約…すべてのことを意識されながらベストを尽くされる方。だからこそ、僕には遠慮しないように。どんな要求にもお応えしますと申し上げたんです」と話し、こちらも全幅の信頼をおいている。「記憶-」では、その三谷監督によって総理大臣役の中井が地面をのたうちまわるような場面があり、これが笑いを誘っている。

ほこりまみれ、泥まみれになりながら、撮影を楽しむガンホや中井の姿が想像できる。それぞれほぼ同世代のコンビの厚い信頼関係があればこその名場面、作品なのだと改めて思った。