首都圏1都3県の緊急事態宣言解除の見極めが25日にも行われる見通しの中、大手シネコンチェーン各社の間で、東京の映画館の営業再開に向けて“3密”を避けるための徹底した施策が検討されていることが21日、分かった。厚労省が示す2メートルの身体的距離の確保を徹底するため、客と客の間を3席空けることを検討する社もあるという。「2メートルを目安に最小1メートル」とした、大阪府の吉村洋文知事が掲げた「大阪モデル」以上の厳格な施策で、東京の映画館の再開を目指す。

TOHOシネマズが、15日から青森から鹿児島までの8県10館の営業を再開したのを皮切りに、各地で映画館の営業が再開した。22日からはTOHOシネマズが愛知県と福岡県、松竹マルチプレックスシアターズとイオンシネマは関西3府県で営業再開に踏み切る。ただ新作は東京で封切り全国公開するのが基本的な流れのため、過去作を上映するしかないのが現状だ。

映画館は、興行場法に基づき各自治体から営業許可を受けている。同法は機械換気設備の設置、その換気能力は1平方メートルあたり毎時75立方メートル以上など厳密に義務付けており、映画館関係者は「映画館の換気システムは安全」と強調する。

その上で、各シネコンチェーンは販売数を絞り客席を販売しているが、あるチェーンの地方の映画館では前後1席、左右3席ずつ空けて客席を販売する施策を行っている。収容人数の4分の1程度しか集客できず、興行収入は激減するが「東京で映画館が開かないと新作は公開されない。東京も同様にやるしかない」と語る関係者もいるという。

シネコン各社におけるこうした3密回避施策検討について、興行関係者は「東京で緊急事態宣言が解除された後、すぐ映画館の休業要請が解除されるかは分からない。業界として足並みをそろえて対策を徹底していると示すことで、1日も早い映画館再開につなげたい狙いだろう」と語った。

○…新型コロナウイルスの影響で、新作の公開延期が相次いでいる。政府が4月7日に緊急事態宣言を発令し、対象7都県の映画館が営業を自粛。同15日には緊急事態宣言が全国に拡大したため、国内ほぼ全ての映画館が休業し、同月半ばまでに公開延期になった映画は120本超。行定勲監督(51)のように、4月11日に「劇場」、今月1日に「窮鼠はチーズの夢を見る」と、1カ月足らずで2本が公開延期された監督もいた。配給大手12社の4月の興行収入総額は、前年同月比96・3%減の約6億8800万円に落ち込んだ。

〇…日本映画製作者連盟(映連)は14日に「映画撮影における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を策定した。セットでの撮影の場合、2メートルを目安に社会的距離が確保できるよう撮影関係者の人数は必要最小限に限定し、1度にセットに立ち入りを許される関係者の最大人数は50人まで、関係者は4平方メートル内に1人など厳密に定められた。出演者は、身体的な接触が必要なシーンの撮影の前後に、手洗いと口唇・口腔(こうくう)内等の消毒を行うことも定められた。