いきなりですが、2743万人と6658万人。これって何の人数だと思いますか。

前者は、先日放送が終了したTBS系連続ドラマ「半沢直樹」の最終回を1分でもリアルタイムで見た人数。後者は全10話のうち、いずれかの放送回を1分ででもリアルタイムに見た人数だ。

ちなみに、日本の総人口は9月1日時点で1億2581万人。つまり、6658万人というと、日本の人口のうち、「半沢直樹」を見た人は2人に1人という計算になる。

もっとすごい数字もある。8145万人だ。これは、今年の日本テレビ系「24時間テレビ」を1分でも見た人数だ。8000万人というと、日本の人口の3分の2。驚きの数字だが、これはれっきとしたビデオリサーチが発表した数字だ。

視聴率は毎分の定時ごとにカウントするので、その瞬間にテレビの前にいるだけでカウントされることになる。つまり、その1秒だけテレビの前にいた人数ということになり、だからこそ、多めの人数になる。

こうした数字が分かるようになったのは、今年4月から、日本全国で視聴率調査に使う機械が統一され、世帯と個人の視聴率を測定できるようになったからだ。これまでの視聴率は世帯視聴率となり、それとは別に個人視聴率が全国で算出されるようになった。

どんな番組も、世帯と個人の2つの視聴率が出ることになり、今後は個人視聴率が主流となるのではとされているのだが、少々気になるのは、個人視聴率の数字だ。全部の番組にあてはまるわけではないが、個人の数字は世帯の数字の約半分というのが大まかなイメージで、つまり、個人視聴率が主流になると、これまでよりも低い数字が踊ることになる。

例えば、「半沢直樹」の最終回の世帯視聴率は32・7%。「ドラマの30%超えは、13年の前作最終回で記録した42・2%以来、7年ぶりの快挙となった」などと報じられ、7年ぶりとか、30%超といったワードによって、すごいドラマだったんだなと実感することになる。

これが個人視聴率で10数%の数字が使われると、比べる土台が違うのであたり前なのだが、なんとなくテレビ番組のスケール感が矮小(わいしょう)化されてしまうと、放送業界も危惧しているわけだ。

そもそも視聴率は、テレビ局がスポンサーに営業するため、広告業界のための数字なのだが、スポーツ紙を含め、視聴率にこだわる記事を書き続けてきたことで視聴率が世間一般に浸透。今では、視聴率の善しあしが世間話で交わされるようになり、低視聴率の番組は「打ち切りか?」「爆死」などといった見出しが踊る記事をネットで見かけるようになった。

昔話で恐縮だが、個人的にも、某局の昼のワイドショーが1・9%という低い視聴率をマークしたときに、紙面で大きく扱ったことがある。結果的にその番組は打ち切りになったので、その流れの一部を作ってしまったことは否定できない。実際、後になって局の幹部から恨みつらみを言われた記憶もある。

個人視聴率が主流になり、数字の高低以外の点にも世間の注目が集まるようになるのか。放送記者としてもその行く末を追い掛けていきたい。