あれから10年、まだ10年-2011年(平23)3月11日に発生した東日本大震災から10年となる21年、フジテレビでは被災地となった宮城、福島、岩手の東北3県を舞台としたそれぞれのアニメーション3作品を制作することをこのほど決めた。

3作品を制作する「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」の起源は、フジテレビが震災発生直後から被災地支援の一環として「こどもおうえんプロジェクト」を立ち上げたことに由来する。おもちゃや絵本、文房具などを被災地に送ったり、アナウンサーらが避難所、保育園、幼稚園を訪れて「出前食育イベント」や「朗読イベント」などを開催するなどの支援を行っていた。

12年4月からは、子どもだけではなく大人も対象とした「ずっとおうえん。プロジェクト」として現在も支援を継続している。

被災地支援でなぜアニメなのか? 近年、観光資源のひとつとなっているのが、アニメーション作品の世界観に共鳴するファンが作品の舞台となった場所を訪れて、実際に作品の登場人物の目線を意識して歩いて回る“聖地巡礼”の旅だ。特に今回は宮城、福島、岩手という自然の美しさ、文化の深さ、食の豊かさのそろった3エリア。しかも震災からの復興を感じる創生の息吹にも触れることができる。この地域の魅力に触れることで、アニメ作品を見ることが次の10年、そして20年後へとつながる無形の資源になっていく。作品に触れることによって、今後の長期的な被災地支援の原動力になり、今後地元の自治体や企業とも連携を深めていく展開も予定しているという。

3作品のうち、宮城編は岩沼市を主な舞台とするテレビアニメ「バクテン!!」(21年4~6月にフジテレビ「ノイタミナ」枠で放送予定)で、岩沼市の男子高校生の新体操部員6人のスポ根×青春群像劇。登場する6人の名字がすべて宮城の地名になっていることに気付いた人はかなりの宮城通といえそうだ。

福島編はいわき市から送る長編アニメ映画「フラ・フラダンス」(21年夏公開予定)で、フラガールを仕事に選んだ新人ダンサーの成長を描く。姉の後を追い同じ世界に飛び込んだ、フラ初心者の夏凪日羽と同期の仲間を追う青春ストーリー。

岩手編は大槌町、遠野市などを中心に他地区の場景も描く長編アニメ映画「岬のマヨイガ」(21年公開予定)で、居場所を失った17歳の少女と、血のつながりのない新しい家族との心の交流を描く。海の見えるかやぶき屋根の古民家で、不思議だが温かみのある共同生活が動いていく。

「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」の高橋透子統括プロデューサーは「16年にこのプロジェクトをスタートさせました。すばらしいクリエーターやパートナーの方々にこの取り組みの企画や趣旨に賛同をいただき、いよいよ来年、震災から10年という節目の年に世に出せることになりました」とあいさつ。そして「それぞれメインのスタッフは舞台となった地を足しげく訪れて、その土地の見どころ、魅力に触れて、作品を見ていただいた方々にその良さをお伝えしたいという思いで取り組んでおります」と各作品の熱の強さを語った。最後に「今後3作品通しての施策や取り組みも進めていきたいと思っていますので、ぜひ期待していただければと存じます」と結んだ。