東映は25日、芸術職研修契約者採用を3年ぶりに実施すると発表した。今回は脚本家職の募集で、契約者は3年間の契約期間中、東映のテレビ企画制作部に在籍しテレビドラマ、映画、配信作品など、映像製作の最前線で実際の職務を経験しながら、実地に研修を受ける機会が与えられる。

今回の採用の狙いとして、東映は「ソーシャルメディアの普及により、個人が気軽に自身のコンテンツを発信できるようになりましたが、この研修では産業メディアのプロフェッショナルを育成したいと考えています」と説明。その上で「東映プロデューサーたちも新しい才能との出会いを求めています。視聴形態の変化、コロナ禍での撮影体制など、映像業界にとっても今は激動の時代です。そんな中で東映と一緒に新しい“挑戦”をしていただける書き手を求めています」とした。

経験は不問で、エントリーの受け付け開始はで21年1月4日、エントリー後、指定のエントリーシートとオリジナル作品の企画書を提出し、書類選考を通過すれば1次選考に進む。東映が提示する課題に沿ったプロット(あらすじ)を提出し、その後の面接では、プロットへの注文を現役プロデューサーが指示し、それに基づき、そのプロットを短編脚本にして提出する流れとなっている。

東映は「必要なのは意欲とセンス、そしてコミュニケーション能力。それらの素養があれば、厳しくもやりがいのある作品作りの中で、スキルは確実に高められていきます」と説明。「この選考の中で、自分自身でも気づいていない『才能』が見いだされるかもしれません。東映としてもそこに期待しています。激動の時代だからこそ、新時代のクリエーターになりたい方を広く募集します」と呼び掛けた。

過去3回の脚本家職の募集には、のべ約1800人の応募があった。その中から選ばれた面々は、卒業後も劇場用映画やテレビドラマ、アニメ作品の製作現場で活躍している。2007年3月に卒業した岩下悠子氏は「相棒」「科捜研の女」「京都地検の女」「おみやさん」「その男、副署長」「臨場」「鈴木先生」「鴨、京都へ行く。」「刑事のまなざし」「東京スカーレット」や映画「3月のライオン」などを手掛けた。

入江信吾は「相棒」「黒子のバスケ」「ゴールデンカムイ」や映画「百夜行」(共同脚本)を手掛けた。

20年3月に卒業した金子香織里氏は「ヒーリングっど■プリキュア」をはじめ「魔進戦隊キラメイジャー」「騎士竜戦隊リュウソウジャー」「快盗戦隊ルパンレンジャーVSパトレンジャー」「警視庁・捜査一課長」などの脚本を手掛けた。「研修ではぜいたくだと思ったことが多々ありました。そのひとつは、さまざまなプロデューサーとともに制作が出来ること。『科捜研の女』や『相棒』など、多種多様な番組制作に関われる機会を与えられるのは、かなりぜいたくな環境です。これは制作部署ならではの強みです。所属中、自分がどのような制作に向いているのかを認識でき、フリーになってからも東映で過ごした経験が生きています」と語った。その上で「他にも、東京撮影所はもちろん京都撮影所にも案内していただけたり、東映の歴史を学べたりと、楽しい事が盛りたくさんでした」とメリットを説明した。

吉原れい氏は「科捜研の女」「刑事7人」「特捜9」などを手掛けた。「東映での研修期間、有意義だったのは、脚本を書くことだけに時間を使えることです。また、プロデューサーに直接プロットを売り込めるので、自分の頑張り次第で実績を作ることが可能なのも魅力だと思います」と、自らの売り込みも可能な環境だと強調した。

下亜友美氏は「魔進戦隊キラメイジャー」「刑事ゼロ」「特捜9」「科捜研の女」「騎士竜戦隊リュウソウジャー」「女子グルメバーガー部」「社内マリッジハニー」「大江戸スチームパンク」などを手掛けた。「東映の名だたる作品に挑戦できる機会を得られたことは何と言っても魅力的でした。しかし、同時に実際に成立できるレベルを求められるので、何度も何度も書き直しを繰り返して…という、心が折れそうになる厳しさと、プロの現場のすごさを感じました」と、採用後に本当の意味での戦いが待っていると強調。その上で「ただ研修中はプロデューサーのみなさんが同じ東映の仲間として厳しいながらも根気強くとことん付き合ってくださるので、その経験が確実に成長につながったと思います」と感謝した。

※■はハート