スタジオジブリの大ヒットアニメ映画「千と千尋の神隠し」(01年、宮崎駿監督)が舞台化されることが明らかになった。女優橋本環奈(22)、上白石萌音(23)のダブルキャストで、来年2月から東京・丸の内の帝国劇場で上演される。東宝創立90周年記念プロジェクトとして海外展開も視野に入れており、世界初演としてお披露目される。

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舞台化は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の演出などで知られる英演出家ジョン・ケアード氏(72)の構想に、ジブリの宮崎監督、鈴木敏夫プロデューサーが応える形で実現した。「子どもにもジブリ作品しか見せていない」ほどのジブリファンであるケアード氏が、17年の来日時に東宝に舞台化を打診。同年、3者の顔合わせの場がもたれ、その場で意気投合して舞台化が決まった。

鈴木氏は「ジョンはいいやつです。僕も宮崎も彼のことを気に入りました。今回の舞台で千尋を大きく育ててほしい」。ケアード氏は「初の舞台化にかかわっていることに興奮し、光栄に思います。これから費やす幾千という時間も楽しみでなりません」とそれぞれ抱負を寄せている。

東宝の池田篤郎常務は「閉塞(へいそく)感で先が見えない時代に、今こそこの作品が持つ『生きる力』が必要とされている」と自信をみせる。ミュージカルではなく、通常の演劇スタイルで制作。作品を象徴する銭湯「油屋」を帝劇の舞台に出現させ、観客を「不思議の町」に誘うという。

主人公の千尋役は橋本と上白石がダブルキャストで務める。橋本は初舞台。19年にケアード氏に会い、千尋役として太鼓判を押されたという。上白石はミュージカル「ナイツ・テイル」(18年)で同氏の演出を受けた経験がある。

池田常務は、2人について「透明感があり、エンタメの世界でいちばん輝いている」とし「橋本さんは声がきれいで、見せる表情のひとつひとつが千尋と近しい。上白石さんは、そのタレント性や訴えかける力をジョンが熟知している」と期待を寄せている。

橋本は「歴史と伝統のある帝国劇場で初舞台を飾ることができ、こんなに幸せなことはありません。プレッシャーや不安がないと言えばうそになりますが、私らしく、楽しくのびのびと演じ、命ある千尋として舞台の中で生きていきたい」。子どものころ、最初に見たジブリ作品が同作だったとし「お父さんとお母さんがブタに変身してしまうシーンは、子どもながらにすごく怖かったです」。

上白石は「時代も国境も超えて愛され続ける作品の1ピースになれるのは大変光栄です。素朴で勇敢な少女をリスペクトを込めて演じたい」。大好きで繰り返し見ている作品とし、「幼い頃は、千尋の両親がブタに変わってしまうところが恐ろしくて」と、橋本と同じ記憶を語っている。1年後の開幕に向け「本作の上演のころには、皆さまが安心して劇場に足を運べる世の中になっていますように」としている。

来年2、3月の東京公演後、大阪、福岡、札幌、名古屋でも上演予定。

 

▼「千と千尋の神隠し」 01年公開。引っ越し先に向かう途中でやおよろずの神々の世界に迷い込んだ少女、千尋が、人間の世界に戻るためさまざまな出会いをし、成長していく。興行収入316億円は日本歴代2位。世界50カ国以上で公開され、米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞するなど国際的に人気。東宝は世界展界も視野に公式ホームページを日本語、英語、フランス語、韓国語、中国語の5カ国語で制作している。