細田守監督(53)の新作アニメ映画「竜とそばかすの姫」(16日公開)が15日(日本時間16日)、フランスで開催中のカンヌ映画祭でワールドプレミア上映された。「竜とそばかすの姫」は、これまでの作品が高く評価される監督の注目すべき新作を集めた「カンヌ・プルミエール部門」に日本から唯一、出品。同監督作品では18年「未来のミライ」が、カンヌ映画祭期間中に併設して開催されるフランス監督協会主催の「監督週間」で上映されたが、同映画祭公式部門への選出は初めてとなった。

レッドカーペットに立った細田監督は、コロナ禍で20年にカンヌ映画祭が中止となったことを踏まえ「今、世界中がコロナ禍にあり、本当に映画祭が開催されるか心配していましたが、しっかりと開催されていることにホッとしました」と口にした。その上で「映画文化が復活して盛り上がりをみせるというその瞬間に立ち会えることは、映画の作り手の一人として誇らしい気持ちです」と感慨深げに語った。

「竜とそばかすの姫」は、カンヌ映画祭で2番目に大きい劇場のドビュッシーで上映され、10代からシニア層まで約1000人の観客で満席となった。細田監督が入場すると、上映前にも関わらず大きな歓声と拍手が起こった。カンヌ映画祭のピエール・レスキュール会長とティエリー・フレモー映画祭総代表は、熱い握手とともに「『BELLE(英題)』は今、世界中のみんなが必要としている作品。このカンヌ映画祭で上映できて光栄だ。細田監督が来てくれて本当にうれしい」と笑顔で出迎えた。

上映後は、場内に明かりがつくよりも早く割れんばかりの拍手が巻き起こり、場内の観客は総立ちとなった。感無量の面持ちの細田監督はゆっくりと立ち上がると、齋藤優一郎プロデューサーや海外配給関係者らと固い握手やハグを交わした。その後、会場全ての人々に手を振り深々とお辞儀すると、拍手と歓声が約14分間も続き、予定にはなかった上映後のあいさつも急きょ行われた。同監督は「気持ちのこもった拍手を本当にありがとうございます」と集まった観客に感謝した。

細田監督は上映後「こんなにみなさんから拍手をもらえるとは思ってなくてビックリしました。世界で初めてお客さんに見てもらい、さらに拍手もいただいて本当にほっとしました」と感激した。その上で「今作はカンヌ映画祭の中でも特殊な作品だと思いますが、映画を愛する人が集まるこの場所で支持してもらえたことは、すごく励みになりますし、力になります。この作品は幸せですね」とコメントした。観客の間からも「とても素晴らしかったです! 傑作でした。細田監督のベスト作品だと思います」(30代男性)など好評の声が相次いだ。

日本でも16日に公開初日を迎えた。細田監督は「いよいよ日本でも本作が公開となりますが、カンヌでご覧になった人たちと同じような気持ちを共有して欲しいです。コロナ禍で大変だと思いますが、感染対策をしながら、ぜひ映画館でこの作品を楽しんで欲しいです」と期待した。