雪組の男役ホープ、彩風咲奈が、トップ音月桂の本拠お披露目公演「ロミオとジュリエット」(31日まで=宝塚大劇場、2月17日~3月20日=東京宝塚劇場)の新人公演(18日=宝塚大劇場、3月3日=東京宝塚劇場)で、3回連続の主役に臨む。新人公演で2回主演した昨年を「大きく変わった1年」と位置づけ、今年も、いきなりの新公主演。大輪を咲かせるべく、最高のスタートを切る。

雪組のホープ・彩風が飛躍の年と期する新年早々、高い目標を掲げた。「真ん中に立つんだったら、その時々でいいんですけど、オーロラのように強い色を身につけられるように」。オーロラは、同じ色、形になることはほぼない。それだけに見る者を引き付ける。これを目指すなら演技の上で無数の引き出しが必要になってくる。

昨年2月に「ソルフェリーノの夜明け」で、新人公演に初主演。同6月も前トップ水夏希の退団公演「ロジェ」の新公に主演した。そして今回、音月お披露目公演「ロミオとジュリエット」で、3回連続となる主演が決まった。無我夢中だった昨年とは違い、主役への重みをずしりと感じている。

「(昨年は)目の前のことを一生懸命やっていたら、温かく見ていただけることもあった。でも今は私自身が前回よりもいい舞台にしたい、と思いますし、周りの方の評価も変わってくる。どんどんどんどん(責任感と重圧が)大きくなっています」。

本公演では、セリフがなくダンスで感情を表現する「死」の役。ロミオの胸にある不安の象徴でもある。

「けいこ中は(死の役柄に)いっぱいいっぱいでしたけど、ロミオとからむシーンが多いので、新人公演にも生きてくる。(本公演の)初日が開けてからは、次(新人公演ロミオ)の闘いが始まってます」。

本公演での難役に加え、新公主演。重圧も2倍。実は、首席卒業の音楽学校時代から、ダンスが最も苦手だったという。克服しようと、けいこでは、あえて目を閉じて踊り、体を使っての表現力に磨きをかけてきた。子供のころから、苦手なことにこそ、真剣に取り組むタイプだった。

「英語と、国語が得意。数学は苦手だったので、数学を一番勉強したんですけど、やっぱり分からなかった。数学には、たくさんトライしたんですけどね、苦手なままでした(笑い)」。無垢(むく)な笑顔も、強いまなざし。努力を続けられるのも才能。それが舞台で生きる。

「去年の1年は、自分にとって大きかった。でも、いつかパタッと(役が)つかなくなるかもしれない。自分が頑張らないと、前へ進めないですもんね」。

新公2度目の主演だった前回、前トップの水から「私も辞めようと思った時があった」と励まされ、今は重圧に耐え、期待にこたえなければならない時期だと感じた。そして3度目の今回、音月からは、また新たな生きざまを吸収する。

「エネルギッシュさが増したというか、ダンスの時も、体全体を使っていらっしゃるので、音月さんが踊ると空気が動くんです。ダイナミックでいて、お芝居は柔軟。毎日、毎日、勉強になります。私も、あんなパワーを出せるようになりたい」。

とはいえ、先輩の背を追うほどに、偉大さを知る。音月ロミオに懐の深さを感じ、それがまたプレッシャーにもなる。

「私は、経験が少ない。でも、若い設定(18歳前後)にしていただいているので、そういう面では背伸びをせず、今の自分をぶつけていけるとも思うんです」。

霧の最中でも、光を見いだせる強さが武器でもある。彩り豊かなオーロラ色を目指し、スターへの階段を駆け上がっていく。【村上久美子】

 

◆ロミオとジュリエット シェークスピア原作の悲恋物語。01年に作詞家、作曲家、演出家でもあるジェラール・プレスギュルビック氏がミュージカル化し、仏のパレ・デ・コングレ・ドゥ・パリ大劇場で初演したものがベース。宝塚では小池修一郎氏の演出により、柚希礼音、夢咲ねねら星組選抜メンバーが昨年7~8月に梅田芸術劇場、博多座で演じ、今回、豪華なフィナーレも加えられた。新人公演は彩風主演。ジュリエットは愛加あゆが演じる。

 

◆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛県生まれ。宝塚音楽学校93期を首席で卒業。07年「シークレット・ハンター」で初舞台。雪組に配属され、08年、阪急・阪神グループの初詣ポスターのモデルに選ばれた。昨年2月「ソルフェリーノの夜明け」で、新人公演初主演。身長173センチ。愛称「さき」。