14年のR-1ぐらんぷり王者、やまもとまさみ(47)をインタビューした。来月6日に東京・渋谷のユーロライブで13年ぶりのひとり舞台「ビー・マイ・ベイビー」の昼夜公演を行う。

ピン芸人日本一を決めるR-1というと、とかく脚光を浴びた優勝者のその後が取り沙汰される。15年のじゅんいちダビッドソン(46)16年のハリウッドザコシショウ(47)17年のあきら100%(47)は、その後もそこそこ活躍しているが、全く売れなくなってしまった王者もいる。

19年の霜降り明星・粗品(28)、昨年のマジカルラブリー野田クリスタル(34)、そして今年のゆりやんレトリィバァ(30)は元々、売れている芸人が受賞した。

やまもとも14年の優勝直後は脚光を浴びたが失速。17年にはクレープ店「ジェラフル小田原店」をオープンして、今では町田店、相模大野店と3店舗のオーナー。芸人よりもクレープ店経営で成功したイメージを強く持っていた。

それが、コロナ禍の今年は、記者のイメージを覆すステージ上でのパフォーマンスを見せてくれた。1、2月の緊急事態宣言の中で上演された「よみがえる明治座東京喜劇」の芝居で、やまもとは落語「らくだ」の主人公らくだをモチーフにした与太郎を演じた。記者は本番を2回見たのだが、最初の登場から「誰だ、これは? やまもとまさみだ!」とちょっとした衝撃を受けた。芸達者が集まった中でも、思わぬ存在感を発揮して、さすがR-1王者と感じ入った。

8月の「劇団ファイヤーヒップス大感謝祭~THAT'S バラエティーショー~」は、例年なら芝居があるのだが、今年はコロナ禍もあってコントの連発。実力者ぞろいの出演者の中、ここでも山本が恐ろしいほどの存在感を感じさせてくれた。

やまもとはクレープ店の経営について「アルバイトをやるとスケジュールを空けることができないし、シフトが入ったり入らないで給料が不安定。経営側に回ることで生活も安定して、お笑いを続けることができる」と話してくれた。

お笑いだけで食って行ければ文句はないが、先の見えない今のご時世。きれい事だけでは生きていけない。家族を抱えて困窮する前の転ばぬ先のつえに感心した。

インタビュー原稿を書きながら、やまもとが経営するフランチャイズチェーンについて調べてみた。すると、それほど多額の資金を用意しなくても、最初は1人からでもやっていけることが分かった。定年を迎えたばかりの記者も、山本の話を聞いて、クレープ店経営を老後の糧を得るための候補に入れてみた。【小谷野俊哉】