片山慎三監督(40)が、新作映画「さがす」(22年公開)が、韓国で開催中の第26回釜山映画祭ニューカレンツ(コンペティション)部門へ出品されたことを受けて、11日に同映画祭で行われたワールドプレミアイベントに都内からリモートで参加した。釜山映画祭の観客からは、スリラー要素の強い作品の主演に、佐藤二朗(52)を起用した理由を聞かれ「ユーモラスなイメージのある役者さんが、裏がある役を演じたら、逆に意外性が出て怖さ、二面性が強調されるんじゃないかと思った」と答えた。

「さがす」は、片山監督の商業映画デビュー作。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と告げた翌朝、姿を消した父を、娘が孤独と不安を押し殺しながら、その行方を探し始める物語不穏な言葉を残して娘の前から姿を消した父・原田智を佐藤、父・智を懸命にさがす娘・楓を伊東蒼(16)指名手配中の連続殺人犯・山内照巳を清水尋也(22)山内と関わりをもつ女性・ムクドリを森田望智(25)が演じる。

釜山の観客から「佐藤二朗さんは(主演作の)『幼獣マメシバ』を見た。とても印象的だった。コミカルな、だらしないキャラクターと思うが、スリラー作にキャスティングした経緯は?」と質問が出た。片山監督は「佐藤二朗さんが、いいなと思ったのは、やはりコメディー俳優として出ていることが多い俳優。ユーモラスなイメージのある役者さんが、裏があるようなお父さん役を演じたら、逆に意外性が出て、いつもやっていない役だからこそ、すごく怖さとか二面性が強調されるんじゃないかと思って、お願いしました」とキャスティングの意図を語った。

その上で、同監督は「(佐藤と)助監督の時に、ご一緒したことがあって、その時に仲良くさせてもらった。今回、ぜひ、この役をやって欲しいと手紙を書き、脚本も(佐藤に)イメージして当て書きしたと伝え、出演していただけることになった」と笑みを浮かべた。

佐藤も「さがす」の公式サイトに寄せたコメントの中で「ある日突然、手紙が来た。長文のその手紙の差出人は片山慎三。19年前のドラマで制作だった男だ。制作とはいえ、当時彼は21歳の右も左も分からぬ、いわゆる『使い走り』だった。でも発想や言葉が面白く、『君、オモロイな』と声を掛けたのを覚えている」と片山監督との出会いを紹介している。その上で「そのあと彼は、数々の現場で鍛練し、感性を磨き、自腹で『岬の兄妹』という映画を監督した。その彼からの手紙には『自分の商業作品監督デビューとなる次作の主演を是非、二朗さんにやって欲しい』と書いてあった。手紙に添えられた、彼の商業デビューとなる『さがす』という妙なタイトルの脚本を読んでみた。『よくぞ俺のところに話を持ってきた』と思った。ちょっと凄い作品になると思う。ご期待を」(佐藤のコメントは原文のまま)と、同監督と作品への絶大な信頼をつづっている。