是枝裕和監督(59)が1日、都内で開催中の東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターと共催する「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」の一環で、世界的な名作映画として知られる91年の台湾映画「〓(牛ヘンに古)嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」に主演した台湾の俳優チャン・チェン(45)とリモートで対談を行った。

是枝監督は、番組制作会社テレビマンユニオンでドキュメンタリー番組のディレクターとして活躍し、95年に映画監督としてデビュー。デビュー作「幻の光」は、世界3大映画祭の1つベネチア映画祭(イタリア)で金のオゼッラ賞を受賞した。

テレビの世界で活動する中で、再び映画監督を目指そうと思ったのが「〓(牛ヘンに古)嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」のエドワード・ヤン監督、チェンが出演した05年「百年恋歌」のホウ・シャオシェン監督の存在だったと語った。是枝監督は「エドワード・ヤンとホウ・シャオシェンに出会った。1度、テレビの仕事で台湾に行き、取材したことが改めて映画をやろうと思ったきっかけ。2人に出会わなかったら映画はやらなかった」と語った。

その後、是枝監督はチェンに、エドワード・ヤン、ホウ・シャオシェン両監督に加え97年「ブエノスアイレス」を手掛けた、ウォン・カーウァイ監督の演出法について問いかけ、チェンが語る3監督の演出法に興味深く耳を傾けた。一方、チェンからは「是枝監督は、どのようなお仕事、やり方をされるのですか?」と質問が出た。

是枝監督は「僕は意外と役者に合わせるタイプなので、この役者がどういうアプローチの仕方を好むだろうか、どちらの方が、よりよいお芝居を引き出せるかを観察する。たくさん情報を与えた方が良い方には出来るだけ与えますし、現場で一緒に探しましょうということを受け入れてくれる方には、そういう選択を取る形」と答えた。その上で「意外と、僕って型がないものですから…合わせますよ」と笑顔で返した。これにはチェンも大笑いした。

「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」は、是枝監督を中心とする検討会議メンバーの企画のもと、アジアを含む世界各国、地域を代表する映画人と第一線で活躍する日本の映画人が語り合うトークシリーズ。前日10月31日には、濱口竜介監督(42)がコンペティション部門審査委員長を務めるフランスの女優イザベル・ユペール(68)と対談するなど、東京国際映画祭の会期中に連日、開催される。【村上幸将】