東京国際映画祭でフェスティバルアンバサダーを務める橋本愛(25)が4日、都内で開催中の同映画祭が国際交流基金アジアセンターと共催する「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」の一環として、イラン出身の世界的な監督・バフマン・ゴバディ監督(52)とオンラインで対談を行った。対談の中で、同監督から機会があれば一緒に映画を作りたいとタッグを熱望されると「すごいすてき」と前向きな姿勢を見せた。

ゴバディ監督はクルド人で、テヘランのアンダーグラウンドの音楽シーンを描いた09年のセミ・ドキュメンタリー映画「ペルシャ猫を誰も知らない」が当局の許可が得られず、作品完成後、イランを離れて活動することを余儀なくされた。現在、拠点を置くトルコで撮影された最新作「四つの壁」が東京国際映画祭でワールド・プレミア上映された。

橋本は、ゴバディ監督の代表作の1つ「亀も空を飛ぶ」(04年)を対談の前に鑑賞。「ものすごい感動して、監督の他の映画を見たくなりました。幻想的なシーンでさえも、ものすごいリアル。心情を生々しく描く。エンタメ性も高くて、見ていて面白くてあっという間。最後は涙が止まらなかったです」と感想を語った。

同監督が「キャスティングする時も、自分探しをしているよう…そうしないと選べない。自分の一部を入れて撮る。自分が見つからないと役者も選べない」と語ると、うなずいた。そして「共感というか…私も、役の心を自分の中に入れないと演じられない」と口にした。その上で「監督もキャスティングから役者さんに自分を投影、入魂する向き合い方をされているんだと知って、すごく希望も感じ、そういう作品作りをされる監督さんもいらっしゃるんだと、すごい喜びを感じています」と熱く語った。

一方、ゴバディ監督は、橋本が主演した14年の「リトル・フォレスト 夏・秋」を見たといい「我々の間に距離はない。心にしみてくると距離は関係ないんですよ」と語った。そして「短い時間で撮らなきゃいけないというのは、僕は出来ない。人生を味わいながら撮る…だから私は大プロの役者さんから『3カ月時間あるから遊ぶように撮ろうよ』と言われたい」と苦笑した。

橋本は再びうなずいた上で「(撮影に)私は時間をかければ、かけるほど、うれしい。どんどん、製作時間が短くなっていって1、2週間で撮る。『リトルフォレスト』は1年間…長期間で撮った撮影は覚えている。映画はそれくらい描けないと出来ないんじゃないか?」と昨今の日本映画界の製作事情を紹介。そして「タイムリミットの中で最大限、努力…すてきな作品はたくさん生まれているけれど、監督、プロデューサーも時間をかける、ぜいたくを共有している。なぜ、出来ないのか? 制度、現場環境を、そこに向かって改善できれば良いなと思います」と訴えた。

ゴバディ監督は「日本でも輝く、一生に残る映画が作られた黄金時代があった。みんな、じっくり時間をかけて作られたと思う。今は、スピーディー…すぐに子どもをつくり、将来をどう見ているか考えず、早く早く終わらせようとする」と、橋本と思いは1つであると強調。その上で「我々はスローモーションの世界を作ることが出来る。橋本さんと私の違いはない。素晴らしい俳優の橋本さんと、機会があれば作品を作りたい」と橋本とのタッグを熱望した。

橋本は「ぜひお願いします。スローモーションの時代を作るのが、やるべきことの1つ。ぜひ映画作りを一緒にやれたら良いな…すごいすてきです」と笑みを浮かべた。