「第34回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」が昨年12月28日に日刊スポーツ紙面とニッカンスポーツ・コムで発表されました。発表当日に掲載しなかった部分も加えて、受賞者インタビューでの言葉をあらためて掲載します。

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19年に新人賞を受賞した清原果耶(19)が初の10代、史上最年少で助演女優賞を受賞した。「護られなかった者たちへ」(瀬々敬久監督)では、震災後の宮城県で生活保護受給者のケースワーカーという難役を演じた。

原作は18年に中山七里氏が出版した同名小説だ。

「原作では、私が演じた役の性別は男性でした。男性のキャラクターを私が演じるにあたって、今回女性に変換しました。原作はありますけど、『映画は映画で展開していく部分もあるので、そんなに気にしないでください』って、監督さんがおっしゃってくださりました。なので、原作というよりはいただいた脚本を読んで、役作りしていくっていう方がちょっと大きかったかもしれないです」

ヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」も東北が舞台。震災時は小3だった。映画に出演するにあたり、当時何があったのか、現地の人の声を聞き、資料を読み込んだ。

「『護られなかった者たちへ』に出演させていただくことが決まった時から、どこまで震災を経験していない私が、役に寄り添ったり、現地の方々の思いを知った上で、表現として消化できるのかっていうことを考えました。監督、現場のスタッフさんが資料を用意してくださったりとか、実際に現地に行ってお話を伺ったりとか、そういうことの積み重ねをこの作品でも、朝ドラでもさせていただきました。当たり前ですけど、全部知れるわけではないというか。わからない部分があるのは承知の上で、それをいかに作品に落として、伝えられるメッセージがあるのか、というところを意識しながら向き合っていたような気がします」

映画の中で、重要な人物を演じたが、役作りについて「とってもシンプルだった」と話す。

「もうとにかく脚本を読んで。(演じた)円山幹子の中の正義って、ものすごくはっきり見えやすい役だったので、もう、脚本に書いてあることをできる限り全部吸収して。アウトプットする時もそれがなんか『ささればばいいなー』じゃないですけど、とってもシンプルな役作りだったような気がします。監督ともちろんその都度、話しながらニュアンスを変えたりはしていたとは思うんですけど、そんなに困ることなく。『ああ、円山幹子さんが言っていることがわかるなー』って、自分で思いながらやっていました」

監督から言われたことで、覚えていることがあるという。

「監督から『人はもう多面性がある生き物なので、正義感っていう軸があったとしたら、いろんな顔をその側面に付けて良いよ』って言われたことをすごく覚えています。なので正義感のなかでも優しい面と、トゲと、でも自分の持っている腹の底に抱えている怒りとか、憎悪という気持ちは忘れない。そういうバランスを取りながら、やっていたような気がします」

難しい役だが、演じることが「楽しかったです」ときっぱり。

「あくまで、円山幹子の思いに共感できたというのがあった上でなんですけど。すごく言っていることが分かるし、この『護られなかった者たちへ』という作品のなかで、見ていただいた方々に伝えたいメッセージを、私が演じた役は担っている部分があると思ったので、『ちゃんとやらないと』ってちょっと思っていました」。【佐藤勝亮】

 

◆清原果耶(きよはら・かや)2002年(平14)1月30日、大阪府生まれ。14年オーディションでグランプリ獲得。15年NHK朝ドラ「あさが来た」で女優デビュー。19年映画「デイアンドナイト」などで「日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」新人賞を受賞。21年NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロインを務める。22年TBS系「ファイトソング」で民放ドラマ初主演。162センチ

◆「護られなかった者たちへ」 東日本大震災発生から10年目の仙台で、人格者が全身を縛られ餓死する事件が連続で発生。別事件で服役、出所した利根泰久(佐藤健)が捜査線上に浮かび、宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎(阿部寛)は、利根の幼なじみ円山幹子(清原)含め捜査を進める。