綾野剛(39)の誠実な対応が胸にじーんときた。出演する配信ドラマ、Netflixシリーズ「新聞記者」のワールドプレミアで、若者の悩みや質問に真正面から向き合っていた。

成人の日に行われたことから、イベントでは若い世代から登壇者に対する質問コーナーが設けられた。映像業界や役者を目指す人からの質問も多く、俳優志望の男性から「脚本読解で最も重視していることは何ですか」と専門的なことを聞かれると、綾野は「本気の質問ですね」と姿勢を直して答えた。

「好きなように読んだ方がいいと思います。どこかに答えがあって、その答えを導くために読むのではない。数学は答えがあるけど、脚本には答えがない。今日まで生きて、体感してきたことだけで読んでいいと思うんです。ざっくり言うと、好きに読んでいい。自分を否定する必要はないと思う。僕はこの本を読んでこう思った、ということがより大事になる。なので、好きに読んでください」

質問した男性の真剣度合いをくみ取ってか、「あんまり頑張らなくていいからね。もう頑張ってるから。楽しんでください」と優しいトーンで付け加えた。

「20歳の頃を振り返って、若者に伝えたいことは」という司会の問いかけには、自身の経験を踏まえて「食べること。食べるパワーは生きるパワーに直結している」と答えた。

綾野は「何も仕事がないときも、とにかく食べることはしていました。それがどうつながってるか分からないけど、実体験でしか言いようがない」と、食べることで前向きさを保っていたという。やりたいことが見つからない人に対しても「仲間に教えてもらったことが自分の夢になったっていいじゃないですか。自分で見つけたものが自分の夢にならなきゃいけないなんて定義は捨てちゃおうよ。僕だって、自分が俳優になると思ってなかった。でも今は俳優に一生懸命で、大好きな仕事。その『大好き』を見つけてくれた人が(仲間に)いたんです。それくらいでいいような気がします。それが大事だと思う。だから、まずは食べよう」と呼びかけた。

終了前のあいさつでは作品への思いを語りつつ、再び客席にメッセージを送った。

「この中に、俳優やエンターテインメントの世界に興味ある人たちが何人かいらっしゃいましたけど。自分もさらに精進していきますので、いつか必ず現場で会いましょう。こういった世界に一度でも足を踏み入れて勝負してみようと思った気持ちがうれしいです。そういう気持ちはどんな仕事でも魅力的だと思う」

エンタメ業界を志望する若者には励みになっただろう。綾野の温かい人柄もにじんでおり、いいシーンだったと感じた。