歌手高橋真梨子(72)が27日、生涯最後と位置づける全国ツアー「our DaysーLast Dateー」を東京・立川ステージガーデンでスタートさせた。当初は20年6月に始める予定だったが新型コロナ禍で延期に。今年で歌手人生50年の節目を迎える歌姫が、満を持して約1年半ぶりに渾身(こんしん)のステージに立った。

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「やっとお客さまの前で歌えるワクワク感と、約2年ぶりなので本当にできるかなという緊張感の2つがあります。今まで休んでいた分、今日は楽しめたらと思います。そして何よりお客さまに感謝を込めて歌います」。

開演前にこう語っていた高橋の最後の全国ツアーがスタートした。

オープニング曲は「ありがとう」。ファンへの思いをタイトルに込めた曲で、歌唱中、何度も客席に笑顔で手を振った。その後は、ペドロ&カプリシャスの2代目ボーカルとして73年に発売したデビュー曲「ジョニィへの伝言」や大ヒット曲「桃色吐息」「for you…」など、半世紀の歌手人生を彩る多くの名曲を会場に響かせ続けた。

この日の準備は着々と進めてきた。免疫力を高めるために栄養価の高い食事を心がけ、ストレッチを欠かさず、体力づくりのために散歩や趣味のゴルフで汗を流した。すべては、ソロデビューの翌79年から19年まで41年続けてきたライフワークの全国ツアーを実施するため。「ステージで倒れたら本望です」。生活の全てを音楽にかける高橋はいつもこう言っている。

そんな高橋のことを夫で音楽プロデューサーを務めるヘンリー広瀬氏(78)は、フルート演奏として同じステージで見守った。「お客さまが聞きたい人気曲の上位を選んだ構成にしました。最後のツアーの楽曲と演出を楽しんでいただきたい」と妻の胸の内を代弁した。

約2時間で全21曲を歌唱した公演のラストを飾った曲は「The Road」。体力負担が大きいことなどから、全国ツアーは今回で終止符を打つ。ただ「気力もあるし引退なんて考えられない。テレビも出るかも」とステージで話したように歌手活動は継続する。歌姫の音楽ロードはこれからも続く。【松本久】

◆全国ツアー「our DaysーLast Dateー」 今後神奈川や静岡、北海道など全国各地を回り、最後は10月29日の秋田・あきた芸術劇場まで18都道府県で42公演を行う。

◆ライブの女王 79年の初ソロツアー「ひとりあるき」から19年の「Mari Covers」まで、毎年欠かさずに行ってきた全国ツアーの公演数は、41年間で2763回を重ねた。今年は42公演を予定し、合わせると2805回。これに単発のスペシャルライブなどを加えたトータル動員数は720万人を超える。2000人以上を収容する大規模ホールで、年間25公演以上を41年も継続してきた女性ソロ歌手は高橋のみ。

<高橋すごいメモ>

▼日本人唯一 「音楽の殿堂」と呼ばれる米カーネギーの大ホールで、日本人で唯一3回の公演(93、08、16年)を実施。複数回を実施したアーティストは高橋のみ。

▼主題歌25曲 オリジナルの307曲中、150以上の楽曲で作詞を手掛け、ドラマや映画の主題歌になったのは25曲。

▼紅白歌合戦の紅組最年長記録 16年にソロとして4回目の出場。当時の67歳9カ月は紅組最年長記録。翌年も出場して自己記録を更新(68歳9カ月)。

▼アルバムは4位 15年6月に発売したアルバム「ClaChic」が、オリコン週間ランキングの女性歌手年長記録で4位(66歳3カ月)。

◆高橋真梨子(たかはし・まりこ)本名・広瀬まり子。1949年(昭24)3月6日、広島県生まれ。プロのジャズ奏者だった父の影響で14歳からジャズを学んだ。72年にペドロ&カプリシャスの2代目ボーカルとなり、「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」などがヒット。78年にソロ転向。代表曲に「桃色吐息」「はがゆい唇」「for you…」など。「NHK紅白歌合戦」にソロで5回出場。血液型A。