米俳優アレック・ボールドウィン(63)が昨年10月に新作映画の撮影現場で小道具の銃を誤射し、スタッフ2人が死傷した事故で、死亡した撮影監督のハンナ・ハッチンスさんの遺族が15日、ボールドウィンら関係者を提訴した。訴えたのはハッチンスさんの夫と9歳の息子で、「安全ルールを無視した」として損害賠償を求めている。賠償額は明らかにされていない。

ボールドウィンは安全を意味する「コールドガン」だと告げられて助監督から渡された銃を誤射し、ハッチンスさんが亡くなり、ジョエル・ソウザ監督が負傷した。その後の捜査でボールドウィンが使用したのは実弾入りの拳銃だったことが判明したが、実弾の持ち込みが禁止されている撮影現場にどのような経緯で誰が持ち込んだものかは明らかになっておらず、警察による捜査は現在も続いている。すでにボールドウィンをはじめ、武器担当の責任者ら関係者を相手取った複数の民事訴訟が起こされているが、まだ刑事訴追はされていない。

事故から4カ月近くたってようやく訴えを起こした遺族の弁護士は、記者会見で「ボールドウィンや現場の安全に責任を持つ他のスタッフ、彼らの無謀な振る舞いとコスト削減がハッチンスさんの死を招いた」とコメント。ゴム製の銃を使用しなかったことや銃器の適切な取り扱いについて出演者とスタッフの訓練を行っていなかったことなど撮影現場での銃の使用に関する取り決めを無視したことが悲劇の原因だと主張し、防げた死だとしてボールドウィンのほか助監督や武器担当者らも訴えている。

プロデューサーにも名を連ねていたボールドウィンは昨年12月に米ABCテレビの独占インタビューに応じ、自分は銃の引き金を引いていないと語り、自身に責任はないとの考えを示して批判を浴びていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)