昨年1月に直腸がんの手術を受けた音楽家・坂本龍一(70)が26日、東京・サントリーホールで13年に東日本大震災復興支援のために立ち上げた「東北ユースオーケストラ」演奏会の東京公演を開いた。コロナ禍で中止された20年公演に書き下ろした新曲「いま時間が傾いて」の演奏後、鎮魂の歌だとした上でロシアのウクライナ侵攻について言及。吉永小百合(77)とともに反戦の思いを訴えた。

「いま時間が傾いて」の演奏後、坂本は代表、音楽監督として壇上に立った。楽団を構成する東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島県の小、中、高、大学生の団員を前に「初めて生で聴いた。内心、かなりグッときた。みんなの演奏も良かった」とたたえた。

その上で「鎮魂の音楽ですけども、聴くと3・11とともに、どうしてもウクライナのことを思い浮かべちゃう。もちろん、自然災害と戦争とは違うものだけれど、鎮魂という意味では共通しているところがある」と口にした。さらに「失ったものに対する懐かしさ、残念な気持ち、郷愁、鎮魂は音楽を作る人間の心の根っこにある気が、ずっとしている」と続けた。

坂本がピアノで弾いた「母と暮せば」に併せ、吉永は99年の沖縄戦没者追悼式で小学生が詠んだ平和の詩「心のたんぽぽ」を含む6つの詩を朗読した。手にした台本の字は、ウクライナカラーの黄と青で記されていた。朗読を終えた壇上で「本当に争い、なくなると良いですね」と語った。

吉永は公演後、取材に応じ「亡くなった方が、たくさんいる。何としてでも、やめさせなければいけない。黙っていられない。あまりに悲しいし、つらすぎます。ウクライナの人に日本に来て心を休めてと言いたい」と声を震わせた。さらに「日本は11年に大変なことがあって世界中の人が頑張ってと言ってくれた。きちんと思いを込めて出来ることをやっていくことが大事」と、ウクライナの問題を自分事として考える必要性を強調し、こう続けた。

「ロシアの1人の人の圧力による侵略に、みんなで絶対にダメだと言って、あらがえば良い状況になる」

世界的な音楽家の坂本と日本を代表する女優の吉永が、世界にウクライナ救済のメッセージを送った。【村上幸将】