老舗劇団「俳優座」が復活の兆しを見せている。文学座、劇団民藝とともに「新劇御三家」と言われ、数多くの有名俳優を輩出したが、平成以降は低迷の時期が長く続いた。しかし、ここ数年は意欲的な新作、翻訳劇の上演で活気を取り戻し、21年上演の5作品で紀伊国屋演劇賞団体賞を初めて受賞した。

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俳優座とともに「新劇御三家」と言われた文学座、民藝も新しい動きを見せている。

【文学座】1937年に創立された最も歴史のある劇団で、戦中、戦後を通して演劇界の中心的存在だった。戦時下の45年に初演された杉村春子主演「女の一生」をはじめ、「欲望という名の電車」「華岡青洲の妻」をはじめ、別役実作「にしむくさむらい」つかこうへい作「熱海殺人事件」などを生み出した。付属演劇研究所出身者には黒柳徹子、樹木希林、小川真由美、松田優作、中村雅俊、田中裕子、内野聖陽、長谷川博己らがいる。劇団代表は今年3月に江守徹(78)が退任し、角野卓造(73)が新しく就任している。座員は約200人。ベトナム戦争、全共闘運動など激動の時代だった1968年の地方都市に住む家族の物語「田園1968」が6月17日から幕を開け、10月には杉村の代表作だった「欲望という名の電車」が文学座としては35年ぶりに山本郁子主演で上演される。

【劇団民藝】1950年に滝沢修、宇野重吉らによって創立された。第1回公演はチェーホフ作「かもめ」で、以降、三好十郎作「炎の人」木下順二作「審判」清水邦夫作「エレジー」アンネ・フランク原作の「アンネの日記」などを上演してきた。北林谷栄、大滝秀治という名優が所属し、現在は奈良岡朋子(92)が劇団代表を務める。劇団員は約180人。NHK連続テレビ小説とは縁が深く、66年「おはなはん」で樫山文枝、67年「旅路」で日色ともゑが主演している。奈良岡とも親しい元男闘呼組の岡本健一は「グレイクリスマス」に客演するほか、7月には稽古場公演で島崎藤村原作「破壊」の演出に挑戦する。また、6月公演「ルナサに踊る」から後援会会員の寄付をもとに25歳以下の若い世代が無料で観劇できる「ルーキーシート」(メンバー登録などが必要で枚数制限がある)を始めている。