女優でスタントウーマンの伊澤彩織(28)が、来月14日公開の映画「オカムロさん」(松野友喜人監督)で武術の達人・綾子を演じる。ネットで、その名を検索すると必ず首を狩られる、現代によみがえった妖怪“オカムロさん”。家族を殺された綾子は、大学の同級生5人を殺された主人公の少女を鍛え上げ、助けて妖怪と戦う。生首がゴロゴロと転がり、血しぶきが飛ぶバイオレンスホラーの中で、クールにアクションと演技を見せている。【取材・構成=小谷野俊哉】

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伊澤は血みどろのスクリーンで躍動している。「アクション監督の三元雅芸さんと8年ぐらいお付き合いがあって、信頼関係ができてる状態から始めたので、アクションシーンはすごくやりやすかった。作品の前半はダークでめちゃくちゃ首が跳ね飛んでいるんですけど、後半はすごくポップで爽快感のあるアクション。一気にリズムが変わっていくので飽きないし、最後まで楽しめました」。

ネット社会、都市伝説など現代社会の問題点が浮かび上がる“生首ホラー”。「ウィズコロナの時代を反映している作品ですね。オカムロさんは、コロナや疫病をほうふつとさせる。コロナが落ち着いてから見ても、こんな時代があったんだなみたいに振り返ることが出来ると思います」。

元々は日大芸術学部映画学科で、映画の作り手を目指していた。「大学3年生の時に、映画のアクションの現場を手伝う機会があって“アクション部”っていいなと。出演者として出たい気持ちもあったんですが、アクションを軸にやっていこうという出会いでした」。日本では少ないスタントウーマン。「東京でいうと男性が100人に、女性は10人くらい。女性が激しいアクションを求められる作品が少ないですから。現場では役者さんの補助でパッドを付けたり。アクションは準備が9割で、本番は1割くらいですね」。

運動神経がいいわけではなかった。「体育は5段階評価の3。潔癖性だったので、マット運動とか大嫌い。ピアノをやっていて突き指しちゃいけないので、球技とか下手くそ。そんな自分でも、アクションスタント目指せるんだっていうのは衝撃的でした」。危険なシーンでけがもした。「私なんか、肋骨(ろっこつ)に3回ひびが入ったくらいでたいしたことない。目の前で先輩の前十字靱帯(じんたい)がぶち切れるのも見てますから」。

夢がある。「女性にアクションが求められる作品が、もっと作られるようになるといいなと思います。女性版仮面ライダーなんて出来たら、やってみたいですね」と笑顔を見せた。

◆伊澤彩織(いざわ・さおり)1994年(平6)2月16日、さいたま市生まれ。日大芸術学部映画学科卒。女優として19年NHK「ちょい★ドラ『斬る女』」、21年映画「ある用務員」、映画「ベイビーわるきゅーれ」主演、22年フジテレビ「ミステリという勿れ(なかれ)」。メインキャストのスタントダブルとして、19年映画「キングダム」、21年映画「るろうに剣心 最終章」「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」など。