先月28日に敗血症のため61歳で亡くなった俳優渡辺徹さんの妻の榊原郁恵(63)と長男で俳優の渡辺裕太(33)が5日、都内で2人そろって取材に応じた。この日、都内の斎場で家族葬で告別式が営まれ、荼毘(だび)に付したという。2人は家族葬にしたいきさつを語り、徹さんの最期の様子を説明した。2人は時には神妙な表情も見せたが、徹さんの生前の陽気なキャラを語り、笑顔でしのんだ。

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2人は斎場から、喪服姿で駆けつけた。榊原は「サッカーで盛りあがっている中、渡辺徹のことでお集まりいただきありがとうございます」。家族葬で見送ったことに「本来ならお仲間、後輩の方々に見送っていただきたかったのですが、私たちにそこまでフォローできる度量がありませんでした。この場をお借りしておわびしたいです」と語った。ひつぎには山盛りのご飯、写真、親戚の手紙やメッセージを入れたという。榊原は「お父さんはスーツがかっこよかったので、一番高いスーツを入れました」と話すと目に涙を浮かべた。

徹さんは11月19日、秋田市で行われた医療フォーラムが最後の仕事となった。発熱があったが、コロナは陰性だったため、オンラインで参加した。榊原は「私も舞台で帰宅が遅かったので、お父さんは気遣って別々に寝ていました」。翌20日に、次男が父が具合が悪そうにしていたのに気づき、2人で病院に連れて行ったという。榊原は「私が間違えて、救急車が到着するところに車を止めてしまい、おとうさん、悪いけど、歩いていってよって、言ってしまいました」。そして「あの人は不死鳥のような人だったので」とうつむいた。

最初の診断は細菌性胃腸炎だったが、その後に、主治医が診断した時には、徹さんは意識がなくICUに入ったという。

裕太が最後に会話を交わしたのは1カ月前。実家に寄った際、母の榊原はいろんなものを持たせてくれたという。その時に、次男が「大変だね」と言うと、裕太は「お母さんとはもう33年の付き合いだから」と答えると、徹さんは「俺はお母さんの夫を35年もやっているよ」と自慢げだったという。幸せな家族像が浮かんで来る。

そして、裕太が元気な徹さんを見たのは11月14日。自身が出演する落語会だった。仕事の都合がつき、夫妻で駆けつけた。榊原は「『裕太の落語はおもしろくなったな』って、言っていました。でも、前日から浅草の老舗洋食店で何を食べようか悩んでいました」と笑わせた。

徹さんは28日に亡くなったが、家族で最期を見取ることができた。榊原は「もしかしたら、体の中の心臓は止まっていたのかと思いますが、最後の最後まで私たちが来るまで待っててくれました」。

最後に喪主を務めた裕太が「あんまり多くを語り合う親子関係ではなかったんですが、『任せたぞ』って言われてると思うので、『あとは任せて』って。えっー、父とともに失礼させていただきます」と語った。【竹村章、加藤理沙】