歌手橋幸夫(本名・橋幸男、79)が12日、都内で記者会見し、「橋幸夫」の名前と楽曲を継承してくれる歌手のオーディションを2月18日に都内で行うことを発表した。会見には橋が所属する夢グループ石田重廣社長(64)も同席した。選考方法は橋の作品の歌唱で、プロアマ、男女を問わない。近々、夢グループのホームページで詳細が発表される。

橋は5月3日の80歳の誕生日で、歌手活動引退を表明している。昨秋、石田社長に「恩師の(作曲家の)吉田正さんが作ってくれた多くの歌が歌われなくなることが心残りだ」と話した。それに対し、石田社長が橋幸夫の名前を継承し、橋の作品を歌い継ぐ歌手の選考会を提案した。

審査も行う橋は「ものまねではなく(私の作品を)こういう歌い方もあるんだと思わせてくれる方を選びたい」と話した。石田社長によると、少なくとも1人、多くて3人の継承歌手を選ぶ。ただ「橋幸夫」の名前をそのまま継ぐのではなく、「橋幸雄」「橋幸生」のように、「夫」と部分の字は変える。また本名の「橋幸男」も除外される。選ばれた歌手は夢グループの社員になるという。

5月1日に東京・浅草公会堂で行うラストコンサートでお披露目される。石田社長は「橋さんにレッスンしてもらって、デビューさせたい。デビュー曲は橋さんの楽曲で、選ばれた方の個性に合った作品になるでしょう。3人選ばれて、グループということもあるが、すべてはこれからです」と話した。

選ばれた歌手は「潮来笠」「霧氷」「恋のメキシカンロック」「江梨子」「子連れ狼」など基本的に橋の作品を歌っていくが、橋のイメージに合った新曲も歌っていく予定という。石田社長は「橋さんが作詞、作曲していけばいいと思います」と期待した。橋は「レコーディングしただけでその後歌っていない歌も数多くあります。そういう作品も歌ってもらえれば」と願った。「いつでも夢を」(吉永小百合)「今夜は離さない」(安倍理津子)などデュエット曲のヒットもある。これらの今後については「どうするか、これから考えたいです」と話した。

橋は昨年、京都芸術大通信教育学部書画コースに入学した。歌手活動を終えた後は本名の「橋幸男」として、書画作家に比重を置くという。「もうかなりの作品ができています。タイミングを見て、見ていただく機会をつくりたい」と話した。石田社長も「デパートや催事場などで(個展などを)開催していくと思います」と話した。

現在、最後のコンサートツアー「人生は長いようであっという間 夢を持って生きよう!」を開催中。歌手引退の理由は声の衰えだが、コンサートツアーでは「声は思った以上に出ています」と話した。

歌舞伎や落語では「何代目」として名跡が継承されるが、歌謡界ではほとんどない。60年代に、「東京のバスガール」が大ヒットしたコロムビア・ローズが引退。オーディションで「二代目コロムビア・ローズ」が誕生したケースぐらいだ。ほかは引退を表明した二葉百合子の指名で、ヒット曲「岸壁の母」を坂本冬美が歌い継ぐようなケースがあるぐらいだ。橋は「私の時代と芸能界は大きく変わったが、今後、同じように名前を継承するケースが生まれて来るかもしれない」と話した。【笹森文彦】

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