先日、映画「フェイブルマンズ」(スティーブン・スピルバーグ監督)トークイベントを取材し、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」などで知られる、山崎貴監督(58)のあふれ出る映画愛に感動した。

映画「フェイブルマンズ」はスピルバーグ監督の初の自伝的作品。映画監督になる夢をかなえた自身の原体験を描いた。本年度の米アカデミー賞作品賞を含む、7部門でノミネートされている。

山崎監督はイベント前、一足先に鑑賞。「楽しい部分だけ描くのかと思ったらボロボロになる感じとか、スピルバーグでも大変なんだなと思った。タイムトラベルしてスピルバーグの若い頃を見に行った気持ちになって楽しかったですね。映画という呪いを掛けられる少年の話というのが面白かった、ネガの部分を描いていて」と笑った。

山崎監督がスピルバーグ監督作品で最も好きな作品は、77年公開の「未知との遭遇」と即答。ハリウッドのVFXと出会うことが出来た作品だという。

「『スター・ウォーズ』が大騒ぎされていて、その前哨戦みたいな感じで先に『未知との遭遇』がきた。完全にナメていたんです。見に行ったら、とんでもなくて。本当に宇宙人に会ったみたいな気持ちになって、とてつもない衝撃を受けた。それでVFXの仕事を始めちゃったみたいなところがある」。続けて「うちに帰って、ご飯を作っている母親の後を追いかけながら4時間ずっと話していたらしいです」と、巨匠スピルバーグ監督への愛を語った。

学生時代は監督までは目指していなかったというが、卒業文集には「VFX技術者」「特撮技術者」などと書いていたという。当時の思い出を「なかなか話を聞いてくれる人がいない。それに今と違ってフィルムも高くて大変だった」とNGを出すたびにお金が減っていくことがつらかったという。「月に1回、高校生みたいな顔をしてスーパーの棚卸しのアルバイトをした」と、その収入で撮影をしていたことを明かした。

また、同作にちなみ、「出会うことができた憧れの人」は名作映画「タイタニック」で知られる、ジェームズ・キャメロン監督だという。

「会えた時は『こいつがタイタニックを作ったおっさんか!』って思った。現場では怖いと聞いていたのでビビって行ったら、にこやかな人で。現場じゃないと良い人でした」と語る。

さらに、スピルバーグ監督にも会ってみたいと「来日したら、誰か会わせてくれないかな」とニヤリ。「あんたのせいで映画の呪いにかかったんだ!って伝えたい。あんたがいけないんだ!って」とものすごい勢いで語っていた。

この日ともにイベントに登壇したお笑いコンビ、メイプル超合金のカズレーザー、女優山崎紘菜もスピルバーグ監督作品に異様な熱で答えていたが、誰よりも早口で楽しそうに熱弁しているのは山崎監督だった。

映画のイベントで、監督が一番長尺で話すというシーンにあまり出くわさないだけに、印象に残る取材だった。【加藤理沙】