漫談家の街裏ぴんく(38)がブレークの兆しを迎えている。ウソ漫談という独自の芸風は玄人筋からの評価が高く、放送作家の鈴木おさむ氏をはじめ、笑福亭鶴瓶、カズレーザーらが絶賛。昨年のお笑いグランプリ「Be-1グランプリ」で優勝し、先月にはTBS系「ラヴィット!」で中尾彬を見たというウソ漫談を披露すると、ツイッターでトレンド入り。18日には14回目となる単独独演会「六人のマーチ」(東京・座・高円寺2)を開催するが、チケットは既に完売している。

街裏は「メディアへの出演が増えてきたのはうれしいですね。Be-1グランプリの優勝も紹介していただいたり。イベントでRー1やMー1、キングオブコントのファイナリストと一緒の機会があって、Be-1の覇者もいるぞっていじられたり。おいしいこともありました。自信持てましたし、めちゃくちゃ感謝しています」。

もっとも、漫才のMー1に対して、ピン芸人のRー1は向かい風も吹く。昨年のMー1王者ウエストランドのネタにもされた。街裏は「そうですね。過去の優勝者は怒っていらっしゃるんでしょうけど、私は準決勝止まりなんで。自分に言われてる感じはしないですね。でも、自分が(Rー1に)出られたら、もう少し盛り上げられるかな、一役買えるんじゃないかなとは思いました」。

テレビのバラエティー番組には、多数のお笑い芸人が顔をそろえる。街裏は強い突っ込みがあってこそ生かされる芸人だが残念ながらピン。本人はアドリブに弱く、ひな壇芸人としてなかなか力量を発揮できないと自覚しており、以前の取材では「いじってもらえれば、大丈夫なんですけどね。これから克服していきたいですね」と語っていた。

そんな街裏に、ツッコミを入れまくるのがハリウッドザコシショウ(49)だ。街裏のYouTubeチャンネルで共演。容姿いじりからネタいじりまで、これでもかと突っ込む。

「最初はこの風貌なので、1回や2回はいじってくれるのですが、そこで終わってしまう。でも、ザコシさんは愛があって、そこまでやるかっていうくらい突っ込んでくれて、私の力を引き出そうとしてくれているんです。スタジオも貸していただいて。貴重な方なので、ほんと大事にせなあかんと思います。今後はザコシさんがやるライブにも出させていただきたいですね」。

ザコシショウだけでなく、多くの芸人が街裏を後押しする。1月にフジテレビ系「NEOべしゃり博」に出演した際も、バナナマンが真摯(しんし)にアドバイスをくれた。「容姿いじりで、ナマズ、と振られたときに、力強く返さねばいけないという意識があったんですけど、設楽さんからは、1度それに乗ればいいのにって、教えてくれたんすよ。僕、実はナマズやったんですよって、返すパターンもあるんだよと、その場で言っていただいて。平場でのアドリブ力みたいなところが鍛えられ。その場その場で返し方が、周りによって違うってことも学びました」。

所属事務所先輩のやついいちろう(48)も、飲み会などでアドバイスをくれるという。「めっちゃ親身に相談に乗っていただいて。ほんまの話は、あんません方がええんちゃうって言われたんです。ほんまの普通の話をしてると、ウソつけへんのかいっていう落差が結構がっかりしたりするから。なんか、どこまでも、ウソで行ったらいいのではとアドバイスをいただきました」。

街裏が語るウソ漫談にはリアルな固有名詞もちりばめられる。そこにはファンタジックなこだわりがあり、なんともいえないマニアックな笑いを誘う。「ホイップクリーム」の漫談は、クリームが流れる場所に行って舌を突っ込んでなめるストーリーだが、その場所は富山県小矢部市という、実在する地名を使用している。

今月の単独ライブは14回目を迎えるが、毎回、10本近い新作のオリジナルネタを下ろす。しかも、ネタはすべて手書きだという。

「プロットふうなものではなく、ネタは全部、手書きで書きだします。全部、しゃべり言葉で。書いていくうちに覚えて。全部書き終わったら、あとは要点抑えるぐらいに練習する感じです。この作業がまた難しくて、本当に経験したと思わなきゃいけないんで、一番大切にしています。魂ですね。本当に経験したんや、聞いてくれ、おもろいやろっていう気持ちでやらんと、マジで伝わらないので、全部書くんですよね。飛ばないようにすることが大事なんですね」。

街裏が長年努力し築き上げたウソ漫談という話芸。玄人筋の評価が高いだけに、まずは見て、聞いて、知ってもらうことが求められている。

◆街裏(まちうら)ぴんく 1985年(昭60)2月6日、大阪府生まれ。04年に漫才コンビ、裏ブラウンを結成。3年で開催した後、ピン芸人の街裏ぴんくとして活動。12年に上京。19年にR-1ぐらんぷりで準決勝に進出。昨年のお笑いグランプリ「Be-1グランプリ」で優勝。B129-W129-H112センチ、体重110キロの巨体。