宝塚歌劇雪組「Lilac(ライラック)の夢路」の新人公演が11日、兵庫・宝塚大劇場で行われ、5年目105期生の紀城(きしろ)ゆりやが初主演を務めた。舞台の幕がおり、客席に向かいあいさつに立つと、涙があふれた。

「ホッとして、うれしいのも、多くの方が救いの手を差し出してくださり、ありがたいのと…なんとも言えない気持ちで、ぐちゃぐちゃになりました」

終演後の囲み取材で、照れながら、涙のあいさつのワケを振り返った。

初センターから見た客席は「本当にまぶしくて、あったかい場所なんだなと思いました」と、大役をつとめあげた安堵(あんど)感から笑みもこぼれた。

今作本公演は雪組トップ彩風咲奈が主演し、新トップ娘役夢白あやとの新コンビ本拠地お披露目作。イギリス産業革命の影響を受けた19世紀初頭のドイツを舞台に、鉄道産業の発展を目指すドロイゼン家の長男ハインドリヒが夢を追う姿を描く。

その新人公演で、ハインドリヒにふんし、彩風からは「初めての主演だから、何をしてもいいんだよ」「歴代の主演の方々も、この不安に打ち勝ってきた。だから紀城もできるよ」と励まされたと言い、感謝した。

相手役ヒロインを務めた音彩唯(ねいろ・ゆい)は、紀城と同期の105期生。3度目の新人ヒロインで、今作では本公演で初エトワールも務めており「3度目(の新人ヒロイン)ですので、舞台の空間をいっぱい感じることができたのが大きな発見です」。

一方で、本役の夢白からは「3度目だから完成したものを-とか考えず、失敗してもいいから自分のエリーゼ(役名)を生き抜いて」と言われ、背中を押されたそうで「パワーをもらいました」と明かした。

最近の新人公演は、月組「応天の門」の七城雅、宙組「カジノ・ロワイヤル」の大路りせ、そして今作の紀城と、19年入団の105期生が3作連続。次作の星組「1789-バスティーユの恋人たち-」でも、稀惺(きしょう)かずとの主演が決まっている。

5年目で勢いが増す時期に、コロナ禍も明けた。東京公演に向けては、紀城は「もっと空間を広く、包み込めるように」と言い、音彩は「細かいところを丁寧に」と課題を掲げていた。

東京宝塚劇場での新人公演は6月29日の予定。