ロックバンド、DEENが、3月に結成30周年を迎えた。93年3月に「このまま君だけを奪い去りたい」でデビュー。楽曲はミリオンヒットを記録し、鮮烈な印象を残した。ボーカル池森秀一(53)は「活動休止とか作品が出なかった年が1年もない。作品を作って、コンサートをすることを毎年のルーティンで続けてきた結果が30年」と胸を張った。

「DEEN」結成は突然だった。ある日、プロデューサーに呼ばれた池森。「『試しでいいから歌ってみろ』って言われて。試しって言われているから何も期待せずに歌詞だけ覚えてスタジオ行って『こ~のま~ま』って歌ったら『お前で行くから』って言われて」。突然のデビュー決定。そして「『お前らDEENだ』って言われて」とコーラスやピアノをこなせる、元々別のバンドグループで活動していた山根公路(56)と組むことが決まった。

山根は「最初のころはよく分からないまま、プロデューサーの言う通りにやっている感じでした」とデビュー当時を回想する。「このまま-」はNTT DoCoMoのポケベルのCMソングに起用されるなどし、瞬く間に大ヒット。自分たちの想像をはるかに超える反響に驚きつつも、とまどいもあった。しかし、続けているうちに「ライブとかでファンの方と顔を合わせるようになって話をしているうちに、だんだんと感謝の気持ちが強くなってきて。そういう意味で30周年の重みは感じています」とかみしめた。

結成こそ急造ながらも、親睦を深めて走り続けてきた30年。メモリアルな年を記念し、6月17日に埼玉・大宮ソニックシティ、同22日に大阪・フェスティバルホールで初のフルオーケストラによる30周年コンサートを開催する。その名も「DEEN Premium Symphonic Concert-WINGS TO THE FUTURE-」。17日はパシフィック フィルハーモニア東京、22日は日本センチュリー交響楽団と、東西の名門オーケストラと共演する。

当日は約40人の演奏者らによるフルオーケストラをバックに「このまま-」「瞳そらさないで」「ひとりじゃない」など往年の名曲を披露予定だ。池森は「想像を超えるうねりが来るんだろうなと。楽しみです。きっと何かすごいことになるんだろうと思います」と期待。山根は「こんな大がかりなのは2度とないかもしれない。DEENファンのみならず、音楽ファンの方にも聞いていただきたいですね」と話した。

「フルオーケストラ」による演奏だけに、声援などの“声出し”の可否について、山根は「基本はDEENのライブですし、観に来てくれる方もそう思ってきていただけると思うので、全然出してもらっても」と説明。もちろん、オーケストラの世界観に浸るファンもいるはず。池森は「そこはフリーで楽しんでもらいたい。クラシックの世界の厳かな雰囲気もあってもいいかもしれないしね」と話すなど、特に制限なく楽しむことができるようだ。

30周年を迎え、今後の行く末は-。池森は「あんまり大きな先のことを考えたことはない。積み重ねです」と話せば、山根は「秀ちゃん(池森)が言ったように、毎年ライブができて作品を出せるのは、聞いてくれる人がいるからこそ。それを毎年続けられれば幸せです」と話す。急造コンビだったからこそ、肩に力が入りすぎず、自然体で来られたと自己分析する2人。これからもその姿勢は変わらない。【佐々木隆史】