昨年の暮れから女性トラブルを報じられていた、タレント中居正広(52)が23日、芸能界からの引退を発表した。平成の初めから芸能取材を始めて、中居の冠番組にも関わっただけに残念だ。今後、トラブルについて真実を語る機会が訪れるのだろうか、それとも永遠の別れとなってしまうのか。90年代以降、最大のスターの1人だっただけに、ファンのショックも大きいだろう。
そして、問題はフジテレビだ。17日に港浩一社長(72)がラジオ・テレビ記者会だけを相手にした会見を開いた。そして、調査委員会の立ち上げを発表したが、日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会ではなかった。これで、スポンサー離れが始まった。75社以上のスポンサーがCMの放送を止め、代わりにACジャパンのCMが流れている。当面の料金は払われるそうだが、4月の改編期へ向けて営業もままならないだろう。
23日は親会社のフジテレビ・メディア・ホールディングス、フジテレビの臨時取締役会が開かれて、第三者委員会の設置、27日にオープンな形で会見を開くことが決まった。問題が発覚してから1カ月。後手、後手に回った感はぬぐえない。何よりもこの日、民放連会長として定例会見に臨んだ、遠藤龍之介副会長(68)が事件について知ったのが、昨年12月中旬の文春砲の自宅取材によってだったことにビックリした。
事件の秘匿性の高さによるものらしいが、被害者保護を掲げることによって、隠蔽(いんぺい)を図ったのではと疑われても仕方がない。バラエティー、ドラマで実績を挙げた上層部が並ぶフジテレビだが、遠藤副会長は「ライブドアによる株買い占め」の問題を乗り切った実績がある。事件に真摯(しんし)に向き合っていれば、対応も違ったはずだ。
中居の番組出演が、1年半にわたって続いたのも疑問だ。特番の出演について「事件を知らないでキャスティングしようとする人に対して、秘密が漏れる可能性があった」と言うが、事件の前に中居は体調を崩して仕事を休んでいた。なんとでも理由は付けられたはずだ。レギュラーの「だれかtoなかい」は、昨年1月に松本人志(61)が自身の問題で「まつもtoなかい」の出演を取りやめた時、その後の改編期でやめる機会はあったはずだ。第三者委員会にきっちりと精査してほしい。
この1カ月にやるべきことは、もっとあったはずだ。古い話で恐縮だが、バブル崩壊時の1991年(平3)にTBSが証券会社から損失補填(ほてん)を受けていて、社長が辞任に追い込まれたのを思い出す。95年にオウム真理教の地下鉄サリン事件が起きた後に、89年に反対運動に関わっていた坂本堤弁護士のインタビュー素材を見せていたことが発覚。坂本弁護士一家は、インタビューを見たオウム真理教により殺害されていた。
この一連のできごとで、70年代から視聴率トップを走り「ドラマのTBS」「報道のTBS」と言われた“民放の雄”は崩壊した。同局「NEWS23」のキャスターを務めていた筑紫哲也氏は96年3月に「TBSは今日。死んだに等しいと思う」とコメントした。現場の社員の悔しさを直に感じた。そして、TBSは信頼性を回復するために長い時間を要した。
1日の遅れが、1カ月、1年、10年と重くなっていく。この日の取締役会では「公表すべきことが決議された場合速やかに公表する」と決定した。“公表すべきこと”とは何なのか。フジテレビの経営陣には、身を捨てて信頼回復に取り組んでほしい。【小谷野俊哉】



