コブクロや絢香をブレークさせた大手レコード会社、ワーナーミュージック・ジャパン社長の吉田敬(よしだ・たかし)さんが7日午後、都内の自宅で亡くなっているのが見つかった。48歳。首をつった状態で、家族が発見した。吉田さんは最近、うつ病で通院しており、警視庁では自殺とみている。吉田さんはソニー時代の実績が評価され、03年からワーナーの社長に就任。特に邦楽部門の業績アップに大きく貢献した。

 警視庁石神井署によると、7日午後、吉田さんが自宅1階トイレのドアの金具に、ひも状のようなものをかけて首をつった状態でいるのを、買い物から帰宅した夫人が発見。7日午後2時46分ころ、119番通報した。救急隊が駆け付けた時にはすでに心肺停止状態で、午後3時45分ころ、搬送先の病院で死亡が確認された。遺書は発見されていない。

 吉田さんは妻、子供と3人暮らし。家族によると、最近はうつ病で通院していたといい、同署では自殺とみている。吉田さんの遺体は8日午後5時半ころ、都内の自宅に戻った。葬儀は密葬とし、お別れの会を後日行う。

 ワーナー担当者によると、吉田さんは10月30、31日に同社40周年記念イベントが控えていることもあり「フィジカル、メンタルを含めて検査したい」として、6日から1~2週間の休暇を取っていた。同担当者は「夏ぐらいから急激に体調が悪かったようです。タフな方だったので、気付かなかった」と肩を落とした。

 吉田さんの突然の自殺に、関係者は一様に驚きを隠せなかった。来週には同じ音楽業界の知人との会食予定を入れていたという。自ら他メーカーに共同企画を持ち込むなど、外部から見れば、仕事に対して意欲的だった。別の同社担当者は「元気がない、という様子もなく、5日は普段通り出社していた」と明かした。自殺の理由として思い当たる節は「ない」としたが、「時折、1~2日休むことはあった」としている。

 吉田さんは敏腕プロデューサーとして手腕を発揮し続けた。ソニー・ミュージック時代はTUBEを手掛けた後、平井堅やザ・ブリリアント・グリーンをトップアーティストに育てた。00年にはデフスターレコーズを発足。ケミストリーをブレークさせた。

 ソニーでの実績を買われ、03年にワーナーの社長に就任。コブクロや絢香を不動のトップアーティストに育て、同社邦楽部門の業績は飛躍的に伸長した。今年に入ってからも、コブクロのアルバムやSuperflyのシングルがヒット。売り上げは好調だった。ある大手レコード会社幹部は「吉田さんは時代やニーズを見て戦略を考えた上でアーティストを作り上げる手法を成功させ、今の主流にした人でした」としのんだ。

 [2010年10月9日9時37分

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