<連載「気になリスト」(12)>

 若手歌舞伎俳優の尾上松也(28)が今、ミュージカルの舞台に立っている。「ロミオ&ジュリエット」(10月5日まで、東京・渋谷の東急シアターオーブ)で、ロミオの友人ベンヴォーリオをダブルキャストで演じている。ミュージカル初挑戦だが、「不安もあったけれど、歌って踊るって、気持ちがいい。正直楽しいです」と話す。

 ミュージカルの世界に誘ったのは、先輩の市川猿之助だった。「20歳になった時、劇団四季の『ライオンキング』に連れて行ってもらい、好きになったんです」。その後、「レント」などを見るようになり、自分も出演したいと思うようになったという。「歌舞伎とはまったく違う世界。カラオケでミュージカルのナンバーを順番に歌って、なりきっていました」。

 そんな時に「ロミオ-」のオーディションを受けて合格し、すぐに同じ高校出身で仲の良かったロミオ役の城田優に報告した。「優もびっくりしていました。僕は人見知りする方なんですが、優がいてくれたおかげで、稽古でも心強かったし、歌やダンス、動きについてもアドバイスもしてくれた。感謝しています」。

 歌舞伎の着物姿から体の線がくっきり出る衣装となるため、本番前に2カ月で8キロも減量して備えた。「心配だったのはダンス。歌舞伎の踊りではあり得ない動きもあるし、格好いいけれど、恥ずかしい動きもある。でも、仲間たちと自主練やレッスンを重ねていくうちに、自分の中の殻が破られて、新しいものが引き出されてきた」。

 父は6代目尾上松助。菊五郎劇団の名脇役で、05年に亡くなったが、子役時代にドラマ「赤胴鈴之助」に鈴之助役で主演した。自身も歌舞伎だけでなく、ストレートプレイに出演したり、昨年は蜷川幸雄演出の騒音歌舞伎「ボクの四谷怪談」でロックを歌った。「歌舞伎は本業ですが、一役者として幅を広げていきたいし、いろいろなことにも挑戦していきたいです」。

 10月中旬の大阪公演を経て、11月に明治座「花形歌舞伎」公演が控える。成長した姿を見せる場になる。【林尚之】

 ◆尾上松也(おのえ・まつや)1985年(昭60)1月30日、東京生まれ。6代目尾上松助の長男で、90年5月に2代目尾上松也を名乗り初舞台。07年に名題となる。映画「源氏物語

 千年の謎」で頭中将、大河ドラマ「八代将軍吉宗」で吉宗の少年時代を演じた。血液型O。屋号は音羽屋。