阪神がオリックスに逆転勝ちし、ついに開幕から続いた最下位を脱出した!

2-2の延長11回に代走の熊谷敬宥内野手(26)が二盗で捕手の悪送球を誘い、「ヘディング」で得点機を生んでそのまま一気に生還した。伏兵の神走塁で、関西ダービーに連勝した。ヤクルトに交流戦優勝を決められたが、リーグ戦は中日と入れ替わり、5位に浮上した。

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真っ白なホームベースしか見えていなかった。懸命に走った。腕を振った。8回に1点差とし、なお2死三塁。三塁走者の佐藤輝は捕逸で同点のホームを陥れた。伏見から送球を受け取った山本がジャンプする、その下をくぐる激走で生還。ベンチでは同期入団の先発伊藤将とハグを繰り返した。

一振りで空気を変えた。直前の8回2死一塁。真ん中低めスライダーを引っ張った。山本から右翼への適時三塁打。4打席目で飛び出した初安打で1点差に迫った。過去2度のオープン戦では通算5打数1安打、2三振と山本優勢だったが、最後に意地を見せた。

「もうとにかく、何がなんでも食らいついてやろうという気持ちでした」。自身19打席ぶりのHランプは、5月29日ロッテ戦(ZOZOマリン)の12号ソロ以来、46打席ぶりの長打でもあった。目覚めの一打から、それまで無得点で眠っていた虎に2点をもたらせた。

「ヨシノブっすかね。やっぱりホームラン打ちたいっすね」

開幕前から「対戦したい投手」には山本を挙げていた。心待ちにしていたからこそ力も入った。4回は内角146キロカットボールに詰まり二ゴロ。バットが真っ二つに折れ、先端側が一塁スタンドまで飛んだ。高さ5メートル程度の防球ネットを越え、推定40メートル地点まで到達した“飛距離”にどよめきは止まらない。山本の高速変化球と佐藤輝のパワーがぶつかったから生まれたハプニングだった。

同学年右腕との対戦で覚醒し、延長11回先頭では左前打で出塁。代走で一塁走者に入った熊谷が二盗すると、捕手からの送球がヘルメットに直撃しボールは中堅方向へ転々とした。その間に一気に本塁生還。3得点に絡んだ4番は、ベンチで仲間と喜んだ。

試合前にヤクルトの交流戦優勝が決まり、阪神は2位が確定。京セラドーム大阪の3万3323人のファンを打って走って魅了した。延長戦までもつれ込んだ「関西ダービー」第2ラウンドの主役は、背番号8だった。そしてついに最下位を抜け出した。【中野椋】

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