辰吉寿以輝(19=大阪帝拳)が、4連勝(2KO)で4回戦ボーイを卒業した。昨年4月にデビューして11カ月で6回戦に昇格。レコードとしては順調だが、試合内容を見れば、本当の勝負はこれからになる。

 デビュー戦となった岩谷戦は、アマ経験のない中で人生初の試合だった。世界王者山中の前座で会場は満員のエディオンアリーナ大阪。カリスマボクサーの父丈一郎の存在もあって「厳しい舞台だな」と思っていたし、試合がどうなるか、全く読めなかった。だが寿以輝はアマ経験豊富な岩谷を激しい連打でねじ伏せた。2戦目の岡村戦も左フック1発でKO勝ち。パンチ力と勝負度胸は新人離れしていた。何よりも「当たれば倒せる」は、寿以輝の大きな魅力になった。

 だがそれは落とし穴にもなる。3戦、4戦はともに判定だった。相手は寿以輝との打ち合いを避けて、距離をとった。接近戦での連打は得意な寿以輝だが、相手の懐に入る「崩し」は苦手だ。逆ワンツーで左ストレートを伸ばしながら飛び込む形が得意だが、相手も映像を見て研究してくる。懐に入れない時は「当たれば倒せる、のに…」という焦りにつながる。

 相手の左ジャブに右クロスを合わせるなどバリエーションがあれば、話は変わるが、寿以輝のカウンターは左ストレート、左フックが多い。寿以輝の飛び込む際に、3戦目の脇田は左フックを、4戦目の三瓶は右ストレートを狙っていた。三瓶が試合後に口にした「(寿以輝は)迷っているように見えた。そういう顔だった」という言葉も見逃せない。試合中はポーカーフェースを貫かなければ、相手を勢いづかせるだけだ。

 初めて取材対象として寿以輝に接したのは3年前の冬だった。16歳の少年は「世界チャンピオンになることが目標です」と迷いなく言った。6回戦になれば、いろんな選手がいる。頭を低くして突進するファイター、6回戦デビューのトップアマ、まだ対戦していないサウスポーもいるだろう。今後も精進を続けて「当たれば倒せる」という長所とはまた違った一面を見せてほしい。【益田一弘】