平成最後の場所となった春場所で22歳の新大関が誕生し、世代交代の波が一気に押し寄せた。その気鋭な若手の波に、25歳の大栄翔(追手風)も乗っている。

自己最高位の東前頭2枚目で迎えた春場所では、幕内上位で7勝8敗と奮闘。高安、豪栄道の2大関を撃破し、白鵬、鶴竜の2横綱にも善戦した。しかし、勝ち越しを懸けた14日目、千秋楽で連敗。勝てば新三役が有力だっただけに「すごいチャンスを生かせなかった。15日間続けての集中力を維持できていない。本当にもったいなかった」と、飛躍の中でも悔しさをにじませた。

高校相撲の名門校、埼玉栄高を経て角界に飛び込んだ。春場所は前頭2枚目以上に埼玉栄高のOBが5人。大栄翔も「(OBが)たくさんいるので刺激を受けた」と、発奮材料にした。持ち味は突き、押し。「(春場所は)前に出られた分、相手に圧力が伝わった」。時間を見つけて母校の相撲部へ足を運び、専任トレーナーの指導を仰いでフィジカルの向上に努め、タイヤを引くトレーニングなどで出足を強化した。

“愛されキャラ”としても存在感を放っている。3学年下の後輩、貴景勝とは高校在籍こそかぶっていないものの、兄のように慕われている。プロ入り後も母校に顔を出していたため面識があり、貴景勝(当時のしこ名は佐藤)が新十両を果たした16年夏場所あたりから仲が深まってきたという。先輩後輩の間柄だが、貴景勝にいじられることもしばしば。上下関係なく接するようになったのは「気づいたら、そうなっていました」。春場所前半には毎日のように、これまた高校の1学年後輩、平幕矢後(24=尾車)と宿舎近くの銭湯に通い詰めた。追手風部屋と尾車部屋の宿舎がともに大阪・堺市内で、自転車で約10分圏内ということもあり、仲のいい後輩と湯船につかって心身の疲労を癒やした。しかし、その矢後にいじられることも増えてきたという。大栄翔は「矢後は、幕内に上がってから調子に乗っているんですよ!」と、愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を見せながら訴えていた。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

笑顔の大栄翔(右)と貴景勝(2018年12月3日撮影)
笑顔の大栄翔(右)と貴景勝(2018年12月3日撮影)