全勝で走ってきた新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)に、とうとう土が付いた。今年初場所の覇者で、三役復帰を目指す大栄翔(27=追手風)に、動きを止めた後に下から押し上げられ、体が伸びきったところで二本を差され寄り切られた。

両者、五角の立ち合いから、上手を狙った照ノ富士の左は、大栄翔の下がりをつかむ格好になった。これで動きが止まった。少し後退した大栄翔だが、右のおっつけから徐々に横綱の体を下から起こして反撃。左をハズに当て、差した右はかいなを返しながら寄り立て、最後は膝が伸びきった照ノ富士を力でねじ伏せるように寄り切った。

報道陣の電話取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「大栄翔は照ノ富士を動かしたいところだろう。流れが止まってしまうと、どうしようもない。早い動き、突っ張りで(攻めたいところ)。立ち合いは当たらせてくれたらいいけど、そうは当たらせてくれないだろう」と読んでいた。予想とは少し外れた展開になったが「大栄翔が中に、うまく入った。こういう馬力のある人は一発があるから怖い」と押し相撲の威力をあらためて感じ入ったように話した。「動きが止まって勝負あった、と思ったけど、その後、中に入ったのが良かった。大栄翔を褒めるべきでしょう」とも続け、照ノ富士については「(止まった後に)押し込んで行けなかった。様子を見すぎたか」と推察し、下がりをつかんだ場面を「下がりを取ってしまった。あれがなければ攻められただろう」と勝負のあやを読み解いていた。