キャリアウーマンの由加利(長沢まさみ)は、恋人の桔平(高橋一生)が名前も職業も偽っていたことを知る。病で倒れ意識不明の桔平が残した書きかけの小説をヒントに、恋人の本当の姿を見つけに行く。

 愛した男は一体誰だというミステリーに加え、探偵(吉田鋼太郎)と一緒に瀬戸内を探し回るというロードムービー的要素のある作品だが、さらにプラスして、由加利という女性の成長物語だと思って見た。

 由加利は仕事はできるが、周囲への気遣いがあまりできない。ミスをしても頭を下げられず、桔平に対してもきつい言葉を投げてしまう。しかし、恋人の素性を探ることを通じ、過ごしてきた日々の何げない出来事がどれだけ幸せだったかを知る。物語が進むにつれ、常に強気でガードが堅かった由加利が変わっていく。そのことが物語に深みを加えている。

 ただ、由加利が頭を下げられないのは変わらなくて、けんかした探偵への最大限の謝罪が会釈、というのにはちょっと笑った。意地っ張りさがかわいい。

 長沢はこれまでで最も、等身大の役と言ってもいいのではないか。働く女性の悩みや、誰かを思う気持ちを自然に演じている。【小林千穂】

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